住民参加型の調査体制構築へ 奄美大島の植物モニタリング 持続可能な環境保全へ

 鹿児島県奄美大島の植物モニタリング調査に関するワークショップが3日、奄美市名瀬の鹿児島大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センター奄美分室であった。鹿児島大学の研究者と地元住民が共に取り組んだ2023年度の調査内容を報告。持続可能な環境保全の在り方について参加者と研究者が意見を交わした。

 ワークショップは鹿児島大学鹿児島環境学研究会主催。世界自然遺産に登録された奄美大島と徳之島では継続的な環境保全活動に対する地元住民の理解と参画が重要な課題と位置付けられ、同研究会が環境省の委託を受けて住民参加型のモニタリング調査の推進体制構築を目指している。

 23年度は奄美大島の3地域で住民と共に植物分布調査を実施した。参加した瀬戸内町蘇刈集落の國宗弓穂さんは、外来種コケセンボンギクモドキの侵入と集落内での拡大の様子を報告。龍郷町秋名・幾里地域の村上裕希さんは「身近な植物に目を向けるきっかけになった。集落案内にも活用したい」と感想を述べた。

 大和村の奄美フォレストポリスを調査した鹿大農学部の鵜川信准教授は、世界自然遺産のコア地域に近い同地で生態系や在来の生物に対する影響が特に強い「侵略的外来種」のアカギやホテイアオイを確認したとして、「駆除を考えるべき」と指摘。外来種のシュロガヤツリを駆除したことで在来種のオニガヤツリが分布を広げたことも合わせて紹介された。

 島嶼研の鈴木英治特任教授は3地域の調査報告を受け、「奄美で初めて確認された植物もあった。継続調査によって外来種の侵入や分布を追跡することもできる」と評価。調査データを活用した植物分布マップの作成方法などを解説した。

 調査報告に先立ち、鹿大教育学部の川西基博准教授が「校庭で植物の多様性を調べてみよう」の題で講演。奄美市、瀬戸内町、大和村の12小学校で行った調査を報告し、「児童への環境教育は身近な自然への関心を高め、学習意欲向上につながる」と語った。

 発表の後は調査への住民参加の促進などをテーマに研究者と参加者が意見交換。「学校行事として実施」「高齢者の健康づくりを兼ね公民館講座で展開」「エコツアーガイドに講師として参加してもらう」「植物の地元での利用方法なども学ぶことで参加者が増えるのでは」などの意見が出された。

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