ブルーギル繁殖でウシモツゴ激減、数千匹→470匹に 東海最多生息地、岐阜・関市の池

 絶滅危惧種の淡水魚「ウシモツゴ」が生息する岐阜県関市のため池で、外来魚のブルーギルが繁殖し、かつての数千匹から470匹まで減少していることが12日、分かった。保護団体が実施した水を抜いて駆除する「かい掘り」で判明した。このため池は、東海3県9カ所の自然生息地の中で最も個体数が多いといい、ウシモツゴを養殖、他の生息地に繁殖させるための重要な池だった。団体は、来年にも再度かい掘りを実施する方針。

 かい掘りをしたのは、中濃地区の自然保護団体や県水産研究所、世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふなどが2005年に結成した「ウシモツゴを守る会」。この池のウシモツゴを繁殖させるなどして、ほかの関、美濃市のため池など約10カ所に放流し、繁殖や定着に取り組んできた。

 10月上旬、構成団体の一つ、NPO法人「ふるさと自然再生研究会」などがこのため池でブルーギルの繁殖を確認。今月10日にかい掘りを実施したところ、約7千匹のブルーギルや多数のフナを捕獲した。ウシモツゴは470匹まで減少していた。団体はブルーギルの繁殖状況から3、4年前に何者かが放流したと推測する。

 繁殖力が非常に強いブルーギルはウシモツゴの卵や稚魚も食べるため、岐阜大地域科学部の向井貴彦教授は「発覚が1年でも遅かったら、この池のウシモツゴは絶滅していた可能性が高い」と指摘する。「すぐにでも再度かい掘りを行い、人が手を加えていない従来の生息地を保全する必要がある」と語った。

 ウシモツゴは、東海地方の固有種で、県内の自然生息地は美濃地方を中心に4カ所しか確認されていない。環境省のレッドリストは絶滅の恐れが極めて高い「絶滅危惧1A類」、県のレッドリストも「絶滅危惧1類」に分類しており、3県とも県条例で保護している。

 【ウシモツゴ】 コイ科の淡水魚で、東海3県の固有種。体は黄褐色で、成体の体長は7センチほど。かつて濃尾平野の水田や農業用水路、ため池に分布していたが、戦後の農地整備や外来魚の捕食などにより生息数が減少。県内での生息地は関、美濃市など美濃地方の数カ所に限られ、環境省のレッドリストでは絶滅の恐れが極めて高い「絶滅危惧1A類」、県では「絶滅危惧1類」に分類されている。生息地を増やそうと、「ウシモツゴを守る会」は、関、美濃市内のため池など約10カ所に放流してきた。現在の自然生息地は岐阜、愛知、三重に計9カ所とされている。

+Yahoo!ニュース-地域-岐阜新聞Web