外来種クリハラリス 浜松で食害問題化 伊豆半島でも拡大? 22年度、北東部などで確認

 浜松市で食害が問題になった特定外来生物のクリハラリス(タイワンリス)が、伊豆地域でも生息域を拡大しているもようだ。放置すれば生息域が県内全域や神奈川県西部に広がる可能性があり、地域の生態系や農業に被害が及ぶ恐れも。専門家は「クリハラリスの問題はまだ関心が低い。自治体は地域住民に周知し、早めの対策を」と呼びかけている。

 静岡県を管轄する環境省関東地方環境事務所などによると、クリハラリスは伊豆半島東部に1980年ごろに定着。分布を広げ、2006年時点で伊豆半島東部の南北37キロの範囲で生息が確認された。22年度の同省の調査では伊豆半島の北東部など06年の範囲外の複数地点で生息が確認され、生息域が広がっている可能性があるという。

 同事務所は20年度に生息確認地点の外縁部にあたる伊豆市牧之郷地区で試験捕獲を実施した。計4匹捕獲し、21年度は捕獲されなかった。試験捕獲終了後も昨年8月ごろまで市がわなを設置していたが、捕獲、地域住民の目撃情報ともになく、同事務所は捕獲が有効だったとみている。

 1月に伊豆地域の自治体担当者や専門家らによる意見交換会を伊豆市で開催し、クリハラリスの生息状況や対策について話し合った。同事務所の担当者は「分布の外縁部はまだ生息個体数が少なく、早期の防除によって根絶や定着防止につなげられる」と指摘。「伊豆半島でクリハラリスの認識を高めてもらい、自治体には捕獲業務の支援や情報提供をしたい」と話した。

 外来生物に詳しいふじのくに地球環境史ミュージアム(静岡市駿河区)の岸本年郎教授(51)は「人間が持ち込んだのだから人間が責任を持って対応するべきだ。外来生物が与える影響は予測できず、対策が遅れるとコストも根絶への時間もかかる」と警鐘を鳴らした。

■捕獲進め半減 浜松22年度末 目撃情報を重要視

 浜松市では1970年代から野生化したクリハラリス(タイワンリス)が確認され、2020年度から対策を本格化させた。捕獲を積極的に進め、同年度に1万匹以上とされた推定生息数は、22年度末に5千匹に減った。

 市環境政策課によると、捕獲数は20年度2767匹、21年度1950匹、22年度971匹。対策を継続している中で捕獲数が減っていることから、生息数が減少傾向にあるとみている。本年度当初予算にも1800万円を計上し、捕獲用わなの設置や市民向け捕獲講習会を実施する。

 重要視するのが市民からの目撃情報。生息数が少なくなるほど、わなの設置場所を決めるのに有効という。担当者は「生息域を広げさせないことが大切。捕獲をするしかない」と話す。

<クリハラリス(タイワンリス)> 原産地は中国からマレー半島のアジア全域。ペットや動物園での飼育のために日本国内に輸入された個体が逃げて野生化したとされる。頭から胴までの長さと尾の長さがそれぞれ20センチほど、体重は300~400グラム前後。背に黒と黄土色が混じった毛が生えている。種子や果実を好み、鳥類の卵を食べることもある。冬季は樹皮をはいで樹液をなめる。日本固有のリス類とえさや巣が競合すると、生態系への影響が懸念される。

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