セアカゴケグモ、発見から28年でほぼ全国に…専門家「根絶困難」

 28年前に国内で初めて大阪で発見された外来種の毒グモ「セアカゴケグモ」が今では、青森、秋田を除く45都道府県とほぼ全国に広がっていることがわかった。かまれると激しい痛みがある。小型で見つけにくいため、対策が難しく、物流網に乗って広がったとみられる。専門家は「もはや根絶は難しい。確実に駆除し、危険性を下げるしかない」と指摘している。

 「いました。ほぼ成体のメスですね」。4月上旬、最初の発見地となった大阪府高石市で調査をした関西クモ研究会員の清水裕行さん(74)が、赤い模様を持つクモを岩陰で見つけた。

 セアカゴケグモは豪州や東南アジアなどに分布し、オスが体長4~5ミリ、メスが7~10ミリ。毒を持つメスにかまれると強い痛みのほか、発汗や 動悸どうき などの症状が表れることもある。ただ、専門家によると国内の死亡例は確認されていない。

 同市で初めて見つかったのは1995年9月。海外からのコンテナなどに付着して侵入したとみられる。府などによると、これまでに府内で100件以上の被害報告があったという。

 国立環境研究所などによると、当初の発見例は西日本中心だったが、2010年以降、東京(14年)、北海道(15年)、長野(19年)など各地に広がり、45都道府県で確認された。

 分布が拡大したのは、体が小さい上、人目につきにくい道路の側溝やプランターの底などに潜むことが多く、駆除が難しいためだ。建築資材などに付着して全国に運ばれたとみられる。

 同研究所生態リスク評価・対策研究室の 五箇(ごか) 公一室長は「発見報告がない県にも、すでに侵入している可能性が高いと考えられる。競合する種や天敵が少なく、住みやすい環境なのだろう」と話す。

 昨年5月に成立した改正外来生物法では、セアカゴケグモなどの特定外来生物の駆除について、都道府県などの自治体の責任が定められた。

 追手門学院大の加村隆英名誉教授(クモ分類学)は「ここまで広がった以上、根絶は難しい。どこにでもいる可能性があることを念頭に、見つけたらすぐに市販の殺虫剤などで駆除するという基本的な対応の徹底が必要」としている。

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