鹿児島県・「民有地含め全体対策を」 ソテツ専門家の清水さん「一刻を争う事態」 海外では全滅も 外来種カイガラムシ

 静岡県東伊豆町にある動植物園・熱川=あたがわ=バナナワニ園は、国内でも充実したソテツ類のコネクション(100種以上)を持つ植物園として知られている。約40年と長年ソテツの管理に取り組んでいるのが学芸員の清水秀男さん(71)。奄美大島で被害を及ぼしている外来種のカイガラムシ(アウラカスピス ヤスマツイ=英語表記の通称はCAS)について清水さんは「猛威をふるい海外ではソテツが全滅した所もある。一刻を争う事態」として、奄美大島での対策について「公有地・民有地を問わず地域全体で対策を進めるべき」と提案する。

 植物園学芸員として海外が原産地のソテツの管理や研究にも取り組む清水さんは、ソテツに関する世界的な学会に所属するなど海外の情報にも精通する専門家。清水さんによると、海外でのCAS被害は、フロリダでは日本のソテツが全滅したほか、自生種はグアム島のサイカス・ミクロネシカが3年で、台湾のタイワンソテツも4年で全滅させたという。

 駆除について清水さんは「どのカイガラムシも手ごわい。ソテツを長年にわたって管理しているが、簡単には退治できない」と語り、カイガラムシの中でも最悪というCASについては「もともとタイなど乾燥地が原産ということもあり、根に寄生する。地上部だけ薬剤散布してもだめで根絶は難しい。効果が強い薬剤があるものの生産中止となるなど、登録農薬には至っていない」と指摘する。

 コガネムシなど甲虫類の中にはカイガラムシを背中に乗せて運ぶ性質があることから、グアムではこうした天敵を放って、生物学的なコントロールに挑む試みも行われている。清水さんは「天敵によりコントロールできても全て排除は厳しい。天敵、登録農薬による薬剤散布、被害葉を切除し焼却などの作業を繰り返すしかない」と語り、奄美大島での対策について「ソテツを全滅させないため対策が進められているが、公有地だけでなく個人や企業など民間の所有地も並行して対策を進めないと意味がない。行政がするのは指導まで、実際の取り組みは民間任せでは地域全体の対策につながらないのではないか」と危惧する。

 甲虫がカイガラムシを運ぶという性質からも駆除対策が施されず、放置されたままの被害ソテツが地域内にあると、駆除されたソテツが再び被害に遭う可能性も否定できない。公有地、民有地並行した取り組みが求められそう。

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