外来生物問題を「まずは知って、考えるきっかけに」 神戸・外来生物展示センター 来年には施設の拡充も

 農作物を食い荒らすアライグマや、メダカを捕食するオオクチバスなど、全国で「外来生物」の問題が深刻となっているなか、神戸市長田区の「外来生物展示センター」では、農作物被害や、生態系への影響を及ぼしている外来生物問題の啓発活動に力を入れている。

 今年の8月21日、神戸市長田区苅藻町にオープンした、外来生物展示センター。「感じる・知る・考える」をコンセプトに、実際に外来生物に指定されている生物の展示や、はく製、写真などで学ぶことができる施設となっている。外来生物に特化した常設の施設は全国の自治体初。

 もともと北米原産の哺乳類であるアライグマは、ペットとして大量に輸入されたが、人によって野外に放されたり、逃げ出したことで、全国に広がった。神戸市内ではアライグマによる、年間約1700万円の農作物への被害が出ている。また、住宅の屋根裏に侵入し、騒音や悪臭の原因になったり、在来種のカエル類やカメ類を捕食し、その生態系へ影響を及ぼしている。日本にもともと住む在来種のホンドタヌキの数にも影響を与えているという。

 同センターではアライグマとタヌキのはく製などを公開。アライグマは指が長く、器用に物をつかむことができるところが特徴的だ。

 また、外来生物展示センターでは14種類200匹以上もの生きた外来生物の展示も行っている。そのうちの1つで、もともと北米原産の甲殻類であるアメリカザリガニは、1927年に輸入され、今では全国の川や池で見られるほどに広がったもの。水草や昆虫、魚などを食べるため、水辺の生態系へ大きな影響を与えている。同センターでは、生きたアメリカザリガニと、アメリカザリガニが生息する前と後で、水生植物が減り、濁ってしまった池の写真も並べ、外来生物の現状を示している。

 外来生物展示センターを管轄する神戸市環境局自然環境課の野坂翔馬さんは「外来生物問題は一人ひとりが意識し、行動することが重要。具体的には、外来種を入れない、飼育している外来種を捨てない、他の場所に広げないことが大切なので、まずは知って、考えるきっかけにして欲しい」と話す。

 同センターは、毎週土曜日と日曜日の午前11時から午後5時まで観覧が可能で、ホームページでの予約が必要となる。12月と1月は整備期間として休館予定で、来年(2023年)2月頃には展示ホールが拡充・整備されオープンする予定だ。

※ラジオ関西『サンデー神戸』2022年10月30日放送回より

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