アライグマ急増、捕獲数1000匹超える 食害や家屋破損相次ぐ 強い繁殖力に対策悩む自治体

 群馬県内で野生のアライグマが年々増え、農作物食害や家屋破損などの被害が相次いでいる。県内捕獲数は2019年度に1178匹と初めて千匹を超えた。特定外来生物に指定され、雑食性で繁殖力が強く生態系への影響が懸念される。自治体は箱わなの貸出事業などで住民による捕獲を後押ししているものの、夜行性のため生息実態などがつかみにくく、抜本的な解決にならず苦慮している。

 「朝起きたら、大きいアライグマが掛かっていてびっくりした。誰もけがをしなくて良かった」。24日、太田市新田花香塚町の小暮日良(みつよし)さん(77)は驚きの表情を見せた。自宅に設置した箱わなで、体長100センチほどのアライグマを捕獲した。

 その数日前、飼い猫がこぼした餌をアライグマが食べているのを目撃して市から箱わなを借りた。近づくと鋭い歯をむき出して威嚇するアライグマ。小暮さんは「かわいいけど、おっかない」と肩をすくめた。

 アライグマは雑食で果実や木の実、小動物を好んで食べる。イノシシのように大量の食害をもたらすことはないため、被害に気付かないケースもあるという。県の担当者は「夜行性で人目を嫌うので昼間見かけることはほとんどない。市民に実態を知られていないのが現状だ」と指摘する。

 県によると、捕獲数は11年度の91頭から右肩上がりとなり、19年度は約13倍に増えた。アライグマの繁殖力は強く、春に1頭当たり3~6頭を出産する。県は「このまま繁殖に歯止めがかからないと、病気や寄生虫などにより、人や家畜への影響が出ることも考えられる」と危惧する。

 捕獲を担う市町村は対策に頭を悩ませる。太田市には「家庭菜園が荒らされた」「屋根裏にすみ着いた」といった相談が寄せられ、ここ数年は市街地でも被害が確認されるようになった。担当者は「夜行性で生態を把握しにくい。地道に捕獲するしかない」と打ち明ける。アライグマは雄が単独、雌は子と共に2~6頭で行動するため大量の捕獲は難しい。

 市町村は県の鳥獣保護管理事業計画などに基づいて捕獲の許可を出すが、箱わなには子どもがけがをしたり、犬猫などのペットが掛かってしまう懸念もある。このため許可が出るのは、アライグマによる食害が確認され、わな設置者が毎日見回って管理ができる場合などに限られるという。

 被害を抑えるには、地域ぐるみですみ着かせない対策が有効とされる。県は「生ごみやペットフード、熟れた果物などを屋外に放置せず、きれいなまちを維持することが大切。アライグマの特性を知り、複数回見かけたり、被害を確認したりしたら市町村に連絡してほしい」と呼び掛けている。

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