親指の爪ほどの貝がインフラを破壊する 侵略的外来種ゼブラガイ

 侵略的外来種の二枚貝がアメリカ国で急速に分布域を広げている。水槽装飾用のマリモに付着しているのを発見された事例が、全米21州のペットショップで確認された。


 この貝の名は、「zebra mussels(ゼブラガイ、またはカワホトトギスガイ)」。アメリカ地質調査所(USGS)が最近、この貝の調査を行い注目を集めた。調査のきっかけは、あるペットショップの店員が、水槽の装飾に使うマリモ製品にゼブラガイが付着しているのに気がついたこと。全米に展開するペットショップチェーン、ペトコ(PetCo)のワシントン州シアトル店でのことだ。
 いま専門家は、一般消費者向けに市販されているマリモに付着する形で、ゼブラガイが想像以上に広まっているのではないかと危機感をいだいている。
 ゼブラガイは、指の爪ほどの大きさで、中央アジアのカスピ海原産だ。大発生すると発電所や浄水場の取水口を詰まらせたり上水道を機能不全に追い込む、漁船やボートに損害を与えるなどの被害があることから、侵略的外来種に指定されている。
 USGSによれば、今回問題になったマリモはウクライナから輸入された。現在、小売業者が店頭からの撤去を進めている。
 米魚類野生生物局(FWS)によると、ゼブラガイは幼生期には顕微鏡で見ないとわからないほど小さいため、気づかないうちに遠くへ運ばれてしまう。幼生はその後、稚貝の時期を経て成体へと成長する。1匹の雌は年に数百万匹の幼生を生むため、わずか少匹でも湖などに入れば水底はあっという間に覆い尽くされてしまう。
トイレに流さないで
「成体のゼブラガイは水のない場所でも数日間は生存可能で、ボートや漁業用具に『ヒッチハイク』するケースも多い」とFWSはいう。
 このファクトシートには、こうも記されている。「ゼブラガイは、サイズこそ小さいが、水の濾過に使われるパイプを詰まらせたり、海岸を利用できなくしたり、ボートやインフラに被害を与える。在来生物を脅かし、水中の生態系にも悪影響を与える」
 アメリカの五大湖には、ヨーロッパから来た船から放出されたバラスト水経由で、1980年代に到来したと考えられている。
 今回のケースでは、マリモへの付着に気づいたペトコの従業員が、2月25日にUSGSの海生生物非在来種データーベースにレポートを提出。専門家の目にとまった。そこには「過去2カ月の間に開封したほぼすべての貨物で、マリモの中にゼブラガイが生息していた」と書かれていた。
 調査に乗り出したUSGSによれば、3月8日の時点で、販売されているマリモにゼブラガイが付着していた事例は、アラスカ、カリフォルニア、コロラド、フロリダなど21州から報告されているという。
 該当するマリモを最近購入した消費者には廃棄を要請しているが、水洗トイレに流しても死なず、かえって環境に害を及ぼす。確実に廃棄するには、冷凍する、煮沸する、塩素系漂白剤を使う、原液のままの酢に浸すといった方法が推奨されている。
(翻訳:ガリレオ)
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