富士山のクニマスがピンチ「外来ウナギが卵食い荒らす」

 富士山の自然や文化を紹介するオンライン講演会が今月開かれ、山梨県水産技術センターの青柳敏裕主任研究員が、富士河口湖町の西湖だけに生息するクニマスについて「外来種のヨーロッパウナギが産卵場の卵を食い荒らし、生息数が低く抑えられている」と種の保存に向けた危機を訴えた。


 クニマスは秋田県の田沢湖の固有種だった。2010年に西湖で約70年ぶりに発見され、環境省が「野生絶滅」種に指定した。春と秋のヒメマス釣りでは、1割以下の割合で捕獲されることが知られている。
 クニマスに発信器を取り付けたこれまでの追跡調査で、産卵場は水深約30メートルの湖底の1カ所しか見つかっていない。青柳研究員は「産卵場には御坂山地の伏流水が少量わき出し、卵が孵化(ふか)している。伏流水を開発から守ることが保護には極めて大切」と指摘した。
 寿命は3〜6年。生息数は推定2千〜4千匹で思うように増えていない。最大約1・3メートルまで育つとされるヨーロッパウナギはニホンウナギの種苗に混じって放流されたとみられ、「低温で活発に餌を食べる特性がある。水温約5度のクニマスの産卵場所が餌場になっている」と説明した。
 16年の湖底カメラによる調査でヨーロッパウナギによる捕食がわかり、はえ縄での駆除が続けられてきた。プラスチック製の捕獲器を使った効率の良い駆除方法の開発も進められている。(河合博司)
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