コクチバス根絶へ本腰 揖斐川に侵入、岐阜県と漁協が捕獲調査

 北米原産の外来魚「コクチバス」が木曽三川の本支流で相次いで見つかっている問題で、岐阜県が揖斐川で駆除に向けた調査を重ねている。旺盛な魚食性と高い繁殖力を持つ魚だけに、まだ捕獲報告の無い長良川にも分布が拡大すれば、世界農業遺産「清流長良川の鮎」の生態や鵜飼などの漁に甚大な影響をもたらしかねない。同行した捕獲調査の模様と現状をリポートする。


 今月14日、安八郡安八町の国道21号の直下。県や県漁連、西濃水産漁協の関係者ら約20人が集まり、小舟に乗り込んだ。本格的な駆除に向け、詳しい生息場所や生態を探るためだ。
 「2、3年前から流し網に掛かるようになった。ヨシノボリやエビ、何でも食うぞ」と船頭の漁協組合員。先を進む「魚類採取調査実施中」ののぼりを立てた1隻のボートがゆっくりと岸辺に近づき、茂みの陰を中心に魚影を探った。
 電気ショックで動きが止まったところをたも網で捕らえていく。バシャバシャと水しぶきを上げ逃れる大物も。上流約1・5キロまでの両岸を夕方までかかって調べ、捕らえた数は11匹だった。
 6月の同様の第1回調査では、25匹を捕獲している。今回は体長8〜22センチと小ぶりで、「前回よりも小さくなり、新規加入(今年生まれた個体)が増えた」と県の担当者。違法放流などで侵入した後、着実に繁殖、定着している現状がうかがえた。同時に捕らえたオオクチバスは5匹だった。
 県水産振興室の桑田知宣室長は「危惧したほど広がっているわけではないが、これ以上増えないようにする取り組みが必要」とし、魚が集まる越冬期や産卵期を狙い、効率的な駆除を目指すとしている。一方で、「河川での根絶例は知っている限りでは、ない」と打ち明け、継続的な駆除方法を模索する。
 昨年、コクチバスの揖斐川侵入を報告し、駆除に取り組む釣り愛好家団体「サツキマスレズレクション」の北野斉事務局長(58)=大垣市=は「今年だけで会で60匹を駆除したが、糸を切るような大きいのは回遊しており、まだまだいる」と警鐘を鳴らす。
 西濃水産漁協によると、組合員からの漁業被害の報告は今のところないという。
 調査に同行した森誠一岐阜協立大地域創生研究所教授(動物生態学)は「オオクチバスよりコクチバスの方が流水の環境でより定着している印象。長良川にこれが拡散したら、鵜飼という河川文化や観光産業への影響は計り知れず、予防防除が喫緊の課題だ」と話した。
 【コクチバス】 北米原産の淡水魚で、オオクチバスとともに「ブラックバス」と称される。飼育や移動、放流が原則禁止された特定外来生物だが、体長40センチ程度と大きく、引きが強いことから、一部釣り愛好家に人気がある。県内では2005年に山県市の伊自良湖で確認されたが、水抜きで根絶に成功。木曽三川では揖斐川で18年、木曽川支流の阿木川で19年に確認されている。
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