“緑の厄介者” 福岡県内で大繁殖 静かに猛威をふるい… 河川の氾濫引き起こすリスクも

 皆さんは知っていますか? このところ福岡県内、特に筑後地方で大繁殖している『特定外来生物』を…


【地元住民】
「いつの間にかだったですもんね」
「みるみるみるみるうちに…」
その生物は静かに猛威を振るっていました。
正体が…
こちら。
実は、この草が生態系への影響はもとより、水害を引き起こす恐れもある危険な植物だったのです。
【記者】
「すごいですよ。この緑の絨毯。ず〜っと」
「こちらがブラジルチドメグサになります」
【記者】        
「ブラジルチドメグサ…」
「そうですね」
ここは、福岡県大川市の国道沿いにある農業用水路。
水面を覆い尽くしているのは、南米原産の水草『ブラジルチドメグサ』です。
2018年3月の時点ではほんの一部でしたが…
【地元住民】
「そのまましておくとどんどん増えていってね」
「向こうの堀にも広がっていった」
「コイとかなんかもいなくなった」
水中に光が届かず他の生物に悪影響が…
◆ブラジルチドメグサの迷惑行為(1)生物がいなくなる?
【地元住民】
「クサイですもんね。いつでもじゃないけど」
葉は枯れると悪臭を放つこともあるといいます。
◆ブラジルチドメグサの迷惑行為(2)枯れた葉から『悪臭』
大川市内におよそ300キロあるという農業用水路。
そのあちこちに青々とはびこっています。
【地元住民】
「この辺のひどい所を全部撤去してもらったけど、またこうなった」
◆ブラジルチドメグサの迷惑行為(3)異常な繁殖力分裂も?
この現場では水の流れが滞り稲作への影響が懸念されたため、市は2019年3月100万円以上かけ駆除を行ったといいます。
しかし1年もたたないうちに再び増殖してきたのです。
【大川市クリーク課 今村芳信さん】
「(いたちごっこというか)そうですね、今のところ完全な駆除法というのが見つかっていないので…」
「イチゴであったりアスパラであったりお花であったり、園芸栽培に(水路の水を)農業者の方が利用しているので薬剤散布は難しい状況。(除草剤をかければいいというそんな話ではなく)そうですね…」
3月中旬から初夏にかけ、水路や河川で活発に繁殖するというブラジルチドメグサ。
最大の特徴は驚異的な成長速度です。
【福岡県保健環境研究所 金子洋平研究員】
「1日に最大で20センチ程度伸長すると言われている。(1カ月だと…)5〜6メートル2カ月で10メートルを超える成長力になります」
1日に最大で20センチ伸びるという茎は、非常に切れやすく分布をさらに拡大する性質もあるといいます。
【福岡県保健環境研究所 金子洋平研究員】
「茎が水流によって自然に切断されてどんどん流されていくということが分かっていて(何もしないでもちぎれる?)自然に切断されることが分かっています」
元は観賞用の水草として日本に持ち込まれ、野生化。
在来種を駆逐する恐れもあるため2005年、駆除が必要な特定外来生物に指定され栽培や運搬が禁止されました。
県内では2007年に大川市・柳川市などの水路で大繁殖しその後、分布は北へと拡大。
現在では、福岡市や行橋市でも確認されていて、拡大の理由は水流による茎の切断とは限りません。
【福岡県保健環境研究所 金子洋平研究員】
「(分布拡大の)原因ははっきりとは分かっていないが、ブラジルチドメグサの一部が水鳥とかによって運ばれて分布が拡大したのではないかと考えられる」
早期に繁殖を食い止めようと、若者が立ち上がった地域もあります。
訪ねたのは久留米市内を流れる河川。
地元の現状に危機感を抱いた大学生の小宮春平さんがSNSで呼び掛け、およそ10人のボランティアが集まりました。
ブラジルチドメグサを手作業で引き抜いていきます。
【小宮春平さん】
「表面に生えている分はいいんですけど、こういう風に入り込んでる。例えばここ結構深くまで…おっ、ミミズが出てきた。こんな感じで下に入り込んでる分が取り残しやすくて、これが残るとまた生えてきてしまうんで。(水草だが…)水草というか浮草のはずなんですけど、完全に陸地まで入ってくるんで、それがこの草の面倒臭いところですね」
【記者】
「うわっ、すごい!(けっこうつながってるんで…)根がすごい張ってるんですね。(糸状の根毛みたいなものが)マット上に水面を覆ってしまうような感じで。なかなかちぎれない!」
駆除を行った現場は水門のすぐそば。
実はブラジルチドメグサが繁茂することで、河川の氾濫を引き起こすリスクすらあったのです。
【小宮春平さん】
「(ブラジルチドメグサが)雨で流れた時とかにこのぐらいの水門だったら、引っかかってしまって水門の内側で氾濫してしまうという被害とかを出してる事例がある」
結局、駆除した量はおよそ1トンに上りました。
そもそも、寒さに強いこの『厄介者』。
2020年は暖冬の影響もあり、さらなる脅威になるかもしれません。
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