熊本県相良村に計画中の川辺川ダムを巡り、国土交通省は12日、熊本県収用委員会に出していた、ダム建設に伴う漁業権や土地の収用申請を取り下げる方向で最終調整に入った。取り下げを勧告した収用委に対し、近く判断を示すとみられ、ダム計画は発表から40年目にしていったん白紙に戻る。だが、同省は新たに計画を作り直したうえで、収用委に再申請し、あくまで早期のダム本体着工を目指す方針だ。
収用委は先月29日、新利水計画作りの停滞による審理長期化を理由に、9月22日までに申請を取り下げるよう勧告した。関係者によると、勧告を受け、同省は地元首長らにいったん申請を取り下げて早期着工を目指す考えを打診していた。
地元首長で作る川辺川ダム建設促進協議会が12日、人吉市で臨時総会を開催。同省九州地方整備局の川崎正彦・河川部長が「一日も早く着工する意思は決めている」と説明した後、総会が「早期着工を重視し、申請取り下げもやむを得ない」と取り下げを容認する決議を全会一致で採択した。同省は取り下げへ向けて地元自治体の“お墨付き”を得た形になった。【阿部周一】
(毎日新聞)