◇管理良く、生態系維持
奈良市の奈良公園内の池で、環境省のレッドデータブック(RDB)で絶滅危惧(きぐ)種に指定されている純粋な「ニッポンバラタナゴ」の生息が県の調査で確認された。外来種の流入により大阪府や香川県、九州の一部地域以外では絶滅したとされており、専門家は「奇跡的な発見で意義は大きい」としている。
RDBなどによると、ニッポンバラタナゴはコイ科の淡水魚で、かつては琵琶湖以西から九州にかけ広く分布していた。だが戦前ごろから、日本に入ってくるようになった外来種のタイリクバラタナゴとの競合や交雑により激減。交雑していない純粋な個体は、大阪府東部と香川県北部、福岡県など九州中北部のごく一部のため池などを除き絶滅したとされていた。
県が昨年9月、県版RDB作成作業の一環として公園周辺で動植物の生息状況を調査。うち一つの池で見つかった2個体がDNA鑑定により、交雑種でない純粋なニッポンバラタナゴと確認された。県は繁殖状況の調査や保護対策を進める。
調査に携わった北川忠生・近大農学部環境管理学科助手(魚類集団遺伝学)は「釣り人たちによって外来魚が持ち込まれることが多いが、奈良公園は観光地で管理が行き届いているため人の手が入らず、昔からの生態系が維持されていたのではないか」と話している。【野村和史】
8月3日朝刊
(毎日新聞)