2005年02月15日

バスフィッシング・レジェンド、トム・マンが死去

 アラバマ州の地方紙「Eufaula Tribune」の2月12日付けニュースによると、「マンズベイト・カンパニー」の創設者として世界のバスアングラーに多大なる影響を与えたトム・マンが、2月11日、永眠についた。生前、彼はBASSバスマスター・クラシックに7回クオリファイされ(最高は2位)、また2度のシングル優勝を経験。マンズベイトのオーナー兼ルアーデザイナーであり、TVの釣り番組のホストとしても活躍した。

 トム・マンは、1932年アラバマ州ペントン生まれ。1958年に、たった5ドルの自己資金でマンズを起業。オリジナルデザインのルアーを数多く生産し、自分の子供たちにパッケージングをさせるなど、ファミリー企業としてスタートした。1960年には伝説のテイルスピン・ジグ「リトル・ジョージ」を開発(名称の由来は、当時のアラバマ州知事、ジョージ・ワラスから拝借)。また“匂い付きワーム”として時代を席巻したジェリーワームなどのトップセリング・ベイトを世に送り出した。ゼロから頂点にまで駆け上った一事業家として、彼はアメリカンドリームそのものといっても過言ではない。
 また彼はルアーデザイナーとして幅広く認知されているが、ハミンバード・デプスファインダーの開発にも大きく携わったことは、あまり知られていない。
 
 BASS創始者のレイ・スコットは「彼は私がBASSの第1回大会(1967年6月5-7日にアーカンソー州ビーバー・レイクにて開催されたBASSの歴史的第1戦「オール・アメリカン」)を開催すること知ると、2番めにエントリーフィー(100ドル)を送ってきたアングラーだった」と言うが、トム・マンは当初、仕事(ルアー製造)が忙しく日程調整が難しかったことやお金を無駄にする気がするとして参戦を渋っていたという。するとスコットが「君は素晴らしいアングラーだから、きっと勝てるよ。自分のルアーで勝てれば、メーカーの名も広がる」と後押ししたらしい。結果、彼は優勝こそは逃してしまうが、4位に入賞した。
 その後トム・マンは1971年から1978年までのバスマスター・クラシックに7年連続クオリファイされ、1985年にトーナメントから引退するまでの17年間をトーナメントプロとして活躍した。
 
 トム・マンにはこんな面白いエピソードも残っている。
 1973年、彼はある大会で1Lbのバスを釣り上げるが(使用したルアーはジェリーワーム)、その魚がなんとなく他のバスと違ったように見えたため自宅に持ち帰り、巨大な水槽に入れて、“リロイ・ブラウン”と命名し飼育した。その水槽には他にもバスが入っていたが、リロイがもっとも賢いバスだった。その後リロイの噂は広まり、マンは「Tom Mann's Fish World(マンが建てたフィッシング博物館)」に水槽ごと展示。1981年にリロイが大往生で他界すると、トム・マンは葬式を開く。すると800人を越える参列者が集まり、当時のアラバマ州知事も電報を送ったというのだ。アメリカでは葬式の際、棺桶を開けておいて参列者は死者の周りに花を添えるのだが、リロイの場合は、なんとジェリーワームが添えられた。しかも葬儀の日、雨が降ったため、参列者は「神も泣いている」と語り合ったという。
 と、ここでストーリーが終われば「いい話」で終われたのだが、実はこの続きがあったのだ。葬儀を終えたトム・マンは棺を自宅に持ち帰り、とりあえず冷凍庫に入れて保管した。すると、その夜、自宅に泥棒が入り、棺が盗まれたらしいのだ。そして3週間後、オクラホマ州の空港でラゲージ係がヤバい匂いを放つ“フィッシュサイズ”の箱を発見。警察に連絡すると、それがリロイ・ブラウンと判明した。リロイ自身は惨い状態だったため自宅に帰還できなかったが、棺はトム・マンの下に戻された。現在、その棺はFish Worldに展示されている。またマンは、リロイの墓も建てた。 スゴいエピソードである。

 マンズベイトのロゴにはネイティブ・アメリカンのイラストが用いられているが、これはトム・マン自身にチェロキー・インディアンの血が混ざっていて、彼が先祖に敬意を称した証だという。
 トム・マンの死因は心臓手術による合併症の悪化と伝えられている。また彼の葬儀は、2月15日アラバマ州ユーファウラで行なわれる。
 
 心よりご冥福をお祈り申し上げます。        basswaveスタッフ一同

 
 ちなみに先日開催されたWal-Mart FLW TOUR第2戦で優勝したトム・マン・ジュニアとは、血縁関係はない。

+Mann's Bait Company
+Eufaula Tribune
+Eufaula Tribuneに掲載された「トム・マン死去」の記事

トム・マンの自伝「Think Like a Fish」はamazon.co.jpで入手可能(トム・カーターとの共著)

AMAZON.CO.JP™の情報・購入ページ
Think Like a Fish

Posted by DODGE at 2005年02月15日 20:09 in 海外トーナメント:BASS, 海外フィッシング事情, 釣り関連業界

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