1月19日にキックオフとなるアメリカ・メジャーツアー・2005シーズン。 Wal-Mart FLW TOURが19日から、BASS CITGOバスマスターツアーが27日に開幕する。だがその前に、今季両ツアーで話題の中心になるであろう選手、グレッグ・ハックニーについて記しておきたい。彼は昨シーズンFLW TOURとバスマスターツアーで総合年間2位を獲得。その他にも輝かしい成績を残しており、今シーズンの台風の目になるのは間違いないアングラーである。
BASSがCITGOと歩みを共にしはじめた2000年ごろから、アメリカのバスフィッシング界が様変わりしている。ESPNやFOXのような有力TV製作会社が団体の運営や収録方法に加わり、一般層からも大きな注目を集めている。それに伴った賞金の増額も見逃せない。しかし、長期に渡りアメリカのバスフィッシング事情を見てきて、急速に変わろうとしていることがある。若手アングラーの台頭だ。かつてゲーリー・クラインやスタンリー・ミッチェル、ジェイ・イエラスがヤングライオンと呼ばれたように、次世代のアングラーが頭角を現すことでシーンは活気付いた。ケビン・バンダムの出現以来、ビッグネームを脅かす選手が数年間不在していたが、21世紀に入り、ティム・ホートン、アーロン・マーテンス、スキート・リース、マイケル・アイコネリ、そして昨年は日本人初のビッグタイトルを奪取した深江真一さんも若手の筆頭格と数えられる。そんな勢いづくヤング・ジェネレーションを牽引するアングラーが、昨年、突如として登場した。1973年9月1日生まれ。ルイジアナ州ゴンザレス出身のプロアングラー、グレッグ・ハックニーである。
まずは、ハックニーのポテンシャルを検証する前に、彼の戦歴を見ておきたい。
1月29日-2月1日
BASS バスマスターツアー第1戦 116位
2月5-8日 BASS バスマスターツアー第2戦 7位
2月11-14日 FLW TOUR第2戦 59位
2月26-29日 BASS バスマスターツアー第3戦 36位
3月4-7日 BASS バスマスターツアー第4戦 16位
3月10-13日 FLW TOUR第3戦 4位
3月18-21日 BASS バスマスターツアー第5戦 6位
3月25-28日 BASS バスマスターツアー第6戦 9位
3月31日-4月3日 FLW TOUR第4戦 50位
4月14-17日 BASS Elite50 第1戦 2位
5月12-15日 FLW TOUR第5戦 2位
5月19-22日 BASS Elite50 第2戦 39位
6月2-5日 BASS Elite50 第3戦 8位
6月16-19日 BASS Elite50 第4戦 10位
6月23-26日 FLW TOUR第6戦 64位
7月30日-8月1日 BASS CITGO バスマスター・クラシック 35位
8月11-14日 FLW TOURチャンピオンシップ 16位
10月14-16日 BASS サザンオープン第1戦 21位
10月28-30日 BASS サザンオープン第2戦 3位
11月18-20日 BASS サザンオープン第3戦 2位
12月2-5日 BASS オープン・チャンピオンシップ 2位
グレッグ・ハックニー 2004年度の総合成績:
BASS バスマスターツアー 総合2位
ルーキーオブザイヤー・ラインキング1位
バスマスター・サザンオープン 総合1位
FLW TOUR 総合2位
(1年間に11回のトップ10入り)
2003年
BASS オープン・チャンピオンシップ3位
BASSセントラル・オープン 総合1位
FLW TOUR 総合21位
2002年
FLW TOUR 総合10位
2001年
FLW TOUR 総合49位
BASSのトーナメントへは1998-1999年シーズンにセントラル・インビテーショナル(現セントラル・オープン)でデビューを果たしているが、その後2002年までの2シーズンはBASSに参戦していない。その間はFLW OutdoorsのBFL、エバースタート・セントラル戦、サウスイースト戦とFLW TOURに集中して出場していた。
2002-2003年シーズンに入り、ハックニーはまたBASSに戻りセントラルオープンを舞台に活躍しはじめる。データによると、ハックニーの猛威は、昨年からではなく、このシーズンからスタートしたようだ。FLW系トーナメントで鍛錬した成果をBASSセントラルオープンで発揮。第1戦から4位、1位、9位で駆け上がり、セントラル総合1位を獲得。2003年7月に開催されたバスマスター・クラシックへ初出場を果たした。
ちなみにハックニーはBASSに本格参戦した2002年シーズン以後、BASS主催の大会23戦に出場しているが、賞金圏外にあぶれた大会は、なんとたったの2度しかない。つまり91%の確率で賞金を得ているのだ! しかもBASSにおいては、優勝1回、2位3回、3位2回、トップ10入りは15回を数え、内6回はツアーとE50で入賞した。
FLW系トーナメントにおいては、FLW TOURをメインに参戦。エバースタートにも出場しているが、全戦に参戦していたのは1999年と2000年の2シーズンだけ。以後も継続してエバースタートに出場してはいるが、スポット的な出場に止まっている。
FLW TOURに本格参戦した2001年以降、ハックニーは38試合(TOUR、エバースタート、BFLを含む)に出場し、賞金圏内からあぶれたことは4度FLW系では89%の確率で賞金を獲得している。
バスマスター・クラシックには2003年、2004年にクオリファイされ、そして2005年度の出場もすでに決定している(オープン・チャンピオンシップで3位に入賞したため)。またFLW TOURチャンピオンシップへは2002年以降3年連続でクオリファイされている。
こういった経歴だけを見ると、簡単に好成績を残しているように思えるが、両ツアーに参戦する清水盛三さん、バーニー・シュルツやディーン・ロハス、ランディー・ブローキャットなどの成績を見れば、同時参戦が容易なことでないのは一目瞭然。どちらかのツアーで好成績を残せても、どちらかでは奮わない成績で終わるアングラーが多い。過去に、両ツアー同時出場をし試みて、両ツアーでトップの成績を残したアングラーは、ケビン・バンダムとジェイ・イエラスの2人くらいだ。しかし彼らの時代は、現在のように大会日程が過密ではなかったため、2004年シーズンにグレッグ・ハックニーが達成した偉業とはデータの意味が多少異なる。
ハックニーの猛攻は、彼のフェイバリット・テクニックとも関係している。彼はジグのフリッピング/ ピッチングを多用する。昨シーズン(両ツアーのクラシック/チャンピオンシップを含めた全14全)上位5位のウィニング・テクニックのデータを取ると、およそ30%がフリッピング/ピッチングであった。これもハックニーを上位でフィニッシュさせている要因のひとつといえる。
また彼はベジテーションがメインのレイク、ロックハンプがメインのレイクと、どのようなタイプのレイクであっても、自分のスタイルをフィールドにアジャストして釣り勝っている部分にも注目すべきであろう。
グレッグ・ハックニーには、こんなエピソードもある。2004年11月に開催されたBASSサザン・オープン第3戦でハックニーは大きな期待を背負って出場し、見事2位入賞を果たした。この大会で優勝したのはティム・ホートンだったが、ホートンはハックニーついてこう語っている。
「最終日、私とグレッグは同じエリアにいた。彼も私の存在に気づいていたし、優勝が見えていたから、緊張して落ち着かなかった。すると、グレッグのボートが近くに寄ってきて、こう言ったんだ。『ヘイ、落ち着いてゆっくりやれよ。お前には優勝がかかっているんだ。俺は年間優勝を獲りたいだけだ』と。お陰で緊張が解けて、優勝することができた。彼も優勝をねらえるポジションにいて、他のアングラーにあぁやって言葉をかけられる選手はそういるもんじゃない」とハックニーの男気を称えている。
グレッグ・ハックニーの記録を見返してみると、彼がただ者ではないのがひと目でわかる。2005年シーズンのAOYにもっとも近いアングラーの1人として注目していきたい。