南米原産でネズミの仲間「ヌートリア」が静岡県西部で増えています。農作物を食い荒らされる被害が増える中、“驚きの方法”で対策に乗り出した自治体も出ています。
9月、わたしたちが向かったのは浜松市浜名区。市から捕獲を依頼されている業者に同行させてもらいました。 草木をかき分け…小さな川をわたりワナが設置された場所に向かうと…。
(ルーツジャパン 岡本 浩明 理事長)
「一つ入っていますね」
(記者)
「あ、ヌートリアですね。奥にいますね。ヌートリア…子どもですか?」
(ルーツジャパン 岡本 浩明 理事長)
「これはまだ幼獣ですね」
南米原産の外来種でネズミの仲間「ヌートリア」です。
甲高い鳴き声に…
(記者)
「爪は長く、後ろ足も水かきのため非常に長く。オレンジ色の前歯が特徴です」
明治時代、毛皮を利用するため日本に持ち込まれたヌートリア。もともとは西日本が生息域でしたが、10年ほど前から浜松市でも目撃されるように…。2020年度、わずか28件だった目撃情報は2024年度619件に急増。
浜松市は4年前から業者に捕獲を依頼していますが、2024年度、捕獲されたのは239匹で、繫殖のスピードに捕獲が追い付いていないのが現状です。なぜ、これほどまで急速にヌートリアが増えているのでしょうか?
(記者)
「もともと浜名湖畔に生息していたヌートリアですが、こうした水路をたどって生息域を拡大しています。見た目は非常にかわいらしい動物ですが、人に危害を加えることもあるそうです」
繁殖は年2、3回。1回あたり5匹程度の子を産むなど繫殖力が高いことに加え、泳ぎも得意で、西から東へ生息域を拡大していることが理由だといいます。市では「もし見かけても絶対に触らないでほしい」と呼びかけています。
(ルーツジャパン 岡本 浩明 理事長)
「大きいのだと8キロぐらいになるのもいるので。全長だと100センチぐらいになるのもいますね。見た目はおっとりしていますが、結構かみついてくることもあるので、実際かみつかれて、そこから感染症になったり」
食欲旺盛なヌートリアによって農作物が食い荒らされる被害も増えています。
浜松市内の畑でつくられたレンコンには鋭い歯でかじられた跡が…。さらに…。
(コメ農家 二橋 稔泰さん)
「ちょっとこの辺緑が少ないでしょ。この辺が食べられたかな」
こう話すのは、三ヶ日町のコメ農家・二橋稔泰さん。2024年から成長した稲を食べられる被害に頭を悩ませています。
(ヌートリアに稲の食害 二橋 稔泰さん)
「ショックですね。せっかく作ったのに一晩でなくなっちゃう」
田んぼの中から飛び出してきたヌートリアに腕をかまれたこともあったそうです。
(ヌートリアに稲の食害 二橋 稔泰さん)
「対策できたらやってほしいけれど、難しいね. 網とかで囲うしかないのかなと思うけれど、それも大変だし」
ヌートリアは「特定外来生物」に指定され、全国での農業被害額は年間約5000万円に上ります。
そんな農家を困らせているヌートリアを、“驚きの方法”で利活用しようとしているのが磐田市です。
先週、地元の猟友会や大学・JAと連携協定を締結。ヌートリアの定着を防ぐための新たな取り組みが…。
(連携協定締結後の試食の席)
「ソーセージだ」
(磐田市 草地 博昭 市長)
「とてもヌートリアかどうかわからないぐらい…」
関係者が試食したのは、ヌートリアの肉が使われたソーセージとトマト煮込み。“ジビエ”として利活用しようというのです。
この料理を提供したのが菊川市のフランス料理店。
これがヌートリアの肉です。
5年ほど前からヌートリアのジビエ料理を提供しているといいます。
(西欧料理 サヴァカ 山口 祐之 オーナーシェフ)
「こちらがヌートリアのローストになります」
(高山 基彦 キャスター)
「えー。すごいおしゃれな一皿ですね」
気になるその味は…。
(高山 基彦 キャスター)
「えっ。おいしい。何ですか…この想像を絶するおいしさ。あっさりですが、かむとすごくうまみが出てきます。鶏肉よりも柔らかいのではないですか。すごく上質な高級お肉みたい。臭みやくせを想像すると思いますが一切ないです」
ヌートリアの肉は脂が少なく高タンパクなのが特徴だといいます。
(高山 基彦 キャスター)
「素材、物の良さは抜群ですか」
(西欧料理 サヴァカ 山口 祐之 オーナーシェフ)
「ほかのジビエは大きさによって(肉質が)かたくなったり、住んでいる場所によって臭くなったりするが(ヌートリアは)変化が少ないので、どんな料理に対応できる万能ジビエだと思う。オス・メスの差がなく、年間通して同じようなポテンシャルがある。料理人からするとありがたい存在ですね」
数年前からヌートリアが目撃されるようになった磐田市では、今後、捕獲したヌートリアから肉の成分など栄養を分析しジビエとして活用する可能性を探るということです。
(磐田市 草地 博昭 市長)
「コストや売れるものになっていくのか。流通の関係やさばくための施設をどうするのかなど課題がたくさん出てくるでしょうから、そうしたものを乗り越えていけば、ジビエとしての可能性はあるのではないかなと思っています」
駆除するだけではなく地域の資源として命をいただく。
県内でも繫殖が進むヌートリアに対するユニークな取り組みが注目されています。
