特定外来生物に指定されている「クリハラリス」の生息が、大分県別府市で確認されました。繁殖が進めば生態系や農林水産業への影響も懸念されることから、県などが対策を進めています。
クリハラリスは、アジア全域にかけて広く分布し、頭胴長20〜26cm、尾長17〜20cm、体重300〜440g前後になるリスで、環境省が2005年に「特定外来生物」に指定しています。
別府市でクリハラリスの生息が初めて確認されたのは2021年、別府市南部の山中でした。
おおいた生物多様性保全センター 森田祐介さん:
「『クリハラリスじゃないかっていうリスがみつかったよ』ということで、非常にびっくりしましたし、最初は何かの間違いじゃないかと思いました」
離島や半島部を除く九州の本土で確認されたのは初めてで、生息域の拡大が懸念されています。現地では、リスの好物とみられるヤブツバキに食べた痕が数多く確認されました。
森田祐介さん:
「リスがいる証拠ですね。木の皮を前歯で横に削ってしみ出してくる樹液をなめて飢えをしのぐ行動をします。増えてきてしまうと、どんどん森づたいに広がっていってしまう可能性があるので、早期に根絶を目指す必要があります」
かつて大分市佐賀関沖の高島にクリハラリスが生息していました。観光資源として1950年代に11匹が放たれ、その後爆発的に繁殖しました。
高島では2018年から森林総合研究所が中心となって防除を開始。4年間で1600匹以上のリスを捕獲し、2022年以降、生息は確認されていません。その結果、国の天然記念物であるカラスバトの繁殖が確認されるようになったといいます。
森林総合研究所九州支所 安田雅俊さん:
「クリハラリスが高密度に生息するようになって生態系への影響が大きかったと考えられます。高島から根絶したことによって、今後より生態系の回復が起きると考えています」
一方、別府市で生息が確認されたクリハラリスは、DNA分析の結果、高島の個体とは異なる系統であることがわかりました。県やおおいた生物多様性保全センターなどは、2年間に48匹を捕獲しましたが、生息の実態はつかめていません。
森田祐介さん:
「別府にどのくらいのリスがいるのか非常に難しくてわからないです。どこまで広がってしまっているのかっていうのを早く把握したいと思っています」
こうした事態を受けて、県と別府市は今年2月に防除実施計画を策定。生息域の調査を行い、2025年度から7年間で根絶を目指す方針です。
県自然保護推進室 羽田野康仁室長:
「外来生物の中でも特定外来生物となっているということは、生態系への影響が特に大きい。発見初期の段階の対応によって駆除できる確率も上がりますので、この7年間で根絶を目指したい」
国内では天敵が少ないため、増えやすいとされるクリハラリス。対応が遅れれば広範囲に影響を及ぼす恐れもあり、関係者は警戒感を強めています。