春の到来を感じさせるタンポポ。鳥取県米子市にある米子城跡でもこの時期たくさんのタンポポが咲いている様子を見ることができるんですが、今年はある問題が起きいます。実は米子城跡に咲いているのは在来種の貴重なタンポポで、何者かが掘り返して持ち帰る「盗掘」被害の様子が複数回目撃されているんです。市民グループなどが注意を呼びかけているのですが、一体誰が、何のために?
野にひっそりと咲く「スミレ」に…鳥取県の準絶滅危惧植物に指定されている「ウラシマソウ」。 初夏を感じさせる「シャガ」など、米子城跡の城山・湊山では、四季折々の植物が楽しめます。
米子市街地中心部に近い一方で豊かな自然に恵まれているとあって、自然観察スポットとしても知られていますが、実は今、この米子城跡である問題が起こっています。
「トウカイタンポポという、在来種が生えているんですが、こちらを掘り返して持ち帰っている人がいるようだということで…」
こう話すのは、米子城跡で植物観察会を行う市民グループのメンバー。 在来種・トウカイタンポポを掘り返して持ち帰る、いわゆる「盗掘被害」の目撃情報が寄せられているといいます。
米子城山の植物を愛する仲間 メンバー
「こちらの一段下がったところですが、見ていただくとどうでしょう。すごく土がぼこぼこして穴が開いているのが見えますよね。中の土が湿っている雰囲気の見た目があるので、ちょっと新しい掘り穴かもしれないです」
また、取材班も辺りを探してみると…
記者リポート
「盗掘被害のものかは断定できませんが、この数メートルの間にも、1・2・3・4か所の穴が確認できます」
盗掘被害と思われる行為は3月下旬以降少なくとも3回目撃されていて、いずれも2〜3人ほどのグループ。バケツやスコップを手にしていたということです。 また、目撃者の話によると、グループ内で外国語で会話している様子もみられたそうです。
米子城山の植物を愛する仲間 メンバー
「掘り返された穴を見るのび、10本、20本ではない数が掘り返されているんじゃないかと思います。盗まれていることに大変悲しいと思いますし、やはり史跡ですので、そういったところをないがしろにされているというか…自然としても史跡としても残念なことだと思います」
盗掘の背景には「希少植物の不法販売」、「漢方目的」などの可能性が考えられるということです。 また、この「トウカイタンポポ」。鳥取県内では米子城跡にしかない貴重な品種だといいます。
米子城山の植物を愛する仲間 メンバー
「こちらが在来種トウカイタンポポです。総苞片と言うんですけど、外側が反り返らず、シュッとすぼまった形になっているのが特徴です。色もよく見比べると淡いのかなと」
普段私たちがよく目にしている黄色いタンポポの多くは、「セイヨウタンポポ」と呼ばれる外来種なんだそう。 米子城跡には、在来種の「トウカイタンポポ」、外来種の「セイヨウタンポポ」、そして在来種で花が白い「シロバナタンポポ」の3種類が自生しています。
そこで気になるのが、外来種「セイヨウタンポポ」と在来線「シロバナタンポポ」は県内各地で見られるものの、なぜ、在来種「トウカイタンポポ」は米子城跡でしか見られないのかということです。
その理由は米子城の”歴史”にあると考えられています。
いまから400年以上も昔。江戸幕府成立直後の1610年、幕府の命により、加藤貞泰公が岐阜県の黒野城より米子城主となりました。 その際、関東から中部地方に分布していた「トウカイタンポポ」が持ち込まれた可能性があるのです。
加藤貞泰公はその後、愛媛県大洲市の大洲城へと国替えになりましたが、実はこの大洲城にも、四国では珍しいトウカイタンポポが自生しています。
こちらも貞泰公がタンポポを持ち込んだのでしょうか?ちなみに大洲市には「だんだん」や「がいな」などの米子弁も現代に残っているんだそうです。 (米子市発行「米子城山の植物」より)
こうしたユニークな歴史もある米子城跡の「トウカイタンポポ」。米子市文化振興課でも次のように注意を呼びかけています。
米子市文化振興課
「米子城跡は、都市公園「湊山公園」の区域に含まれ、米子市都市公園条例において都市公園の植物の採取は原則禁止されております。米子城跡の植物を採ったり持ち帰ったりすることはお控えください」
山陰放送