稲を食い荒らす大型の巻き貝「ジャンボタニシ」(スクミリンゴガイ)による被害が各地で相次いでいる。佐賀県は今月5日、平年の約3倍の生息数を確認したなどとして注意報を発表。千葉県では食害を受けた稲が平年の3倍超に上る。なぜ被害が広がっているのか。
◇半分食べられた田んぼも
「今年は数が多く、約半分の苗が食害にあった田んぼもある。収量減につながるため、地域の大きな問題になっている」。千葉県山武市など九十九里浜に面した地域を管轄する県山武農業事務所の風戸治子・改良普及課長は、ジャンボタニシの食害に頭を抱える。稲の植え替え作業に追われた農家も少なくないという。
ジャンボタニシは南米原産の外来種で、貝の大きさは2~7センチ程度。農林水産省によると1981年に食用目的で台湾から輸入されたが普及せず、養殖業者の廃業などで放置され、農業水路や水田で野生化した。田植えしてから2~3週間までの柔らかい苗を好んで食べるため、各地で食害が問題になっている。
◇暖冬が影響か 5年ぶりの「注意報」
佐賀県は今月5日、被害多発が予想されるとして初めての「注意報」を発表。全国的にみても2019年に千葉、宮崎県が出して以来5年ぶりの発表となった。佐賀県が5月に早稲品種の水田で調べた結果、1平方メートル当たりの平均生息数は6・8匹で平年(2・1匹)の約3倍に増えていることが分かった。
なぜ大量発生しているのか。県農業技術防除センターの善正二郎・病害虫防除部長は「今年、暖冬で越冬する個体が多くなったからでは」と分析する。九州では6月中旬から田植えが本格化しており、「稲が柔らかい2~3週間は食べられやすいので、水深を浅く管理するなど対策をしてほしい」と呼びかける。
今後梅雨などで降水量が多くなると、駆除用の薬剤を使っても薄まって効果が低下したり、ジャンボタニシが動きやすくなったりして食害が増える恐れがあるという。
千葉県は6月上旬に県内の水田70カ所で調査したところ、2割の14カ所で生息を確認。食害にあった稲は全体の5%だったが、平年(1・5%)の3倍以上で、過去10年で最も多かった。1平方メートル当たりの個体数も平年より6割多い0・44匹だった。
県農林総合研究センターの矢内浩二・病害虫防除課長は「田植えから1カ月ほどたてば稲が硬くなり食害はなくなるが、卵を見つけたら除去したり、他の田んぼに広がらないようネットを張ったりするなど拡大防止策は必要」としている。
ジャンボタニシは稲だけでなく雑草も食べることから、除草目的で水田にまく様子を収めた投稿がネット交流サービス(SNS)で拡散し、話題になったこともあった。しかし、農水省は「一度定着すると根絶するのは困難。周辺にも悪影響を与えるため、除草目的であっても、新たにまくのはやめてほしい」と呼びかけている。【岡田英】