地球温暖化の影響により秋田県沖で収穫量が増加傾向にある未利用魚「シイラ」を活用した「シイラジャーキー」が2023年末に発売され、徐々に人気が広がっている。県立男鹿海洋高校と地元で洋上風力発電事業に取り組む三菱商事などが協力して商品化した。見過ごされてきた漁業資源の価値が改めて見直されている。
「道の駅おが」の店頭には10日、「シイラジャーキー」の袋が入り口付近に並んでいた。脇には「お1人様2コまで」の掲示。販売部門チーフの児玉牧子さんによると、観光客が多く立ち寄る週末にはすぐに売り切れるといい、「高校生が考案したサバ缶も人気メニューになっており『高校生を応援したい』、『今回はどんな味だろう?』といった消費者の心情や関心が人気の背景では」とみる。
1袋550円(税込み)。ビーフジャーキーに似た味だがシイラ独特の酸味をほのかに感じる。酒やビールのつまみに良さそうだ。
三菱商事や地元で洋上風力発電事業を進める「秋田能代・三種・男鹿オフショアウィンド合同会社」によると、シイラジャーキーの開発や販売は、地域資源の価値と漁業関係者の収入の向上を目指す取り組みの一環。22年秋から同校と協議を進め、約1年かけて商品化した。
シイラはハワイでは「マヒマヒ」と呼ばれ高級魚として重宝されているが、国内では臭みなどを理由に敬遠され、市場で流通しにくく利用価値の低い魚とされてきた。秋田では近年、一定の漁獲量はあるものの、もともと食べる習慣や市場がないため、安価で主に国外向けに販売されてきたという。
開発過程では「うまみを引き出しつつ、常温で長期保存が可能な商品」を意識。シイラの風味を閉じ込めて薫製にし、食べやすくしたという。秋田空港などでも販売し、今後は地元スーパーでも別パッケージで販売する予定。同社の関係者は「取り組みが社会に役立っていることを高校生には実感してほしい。あまり注目されてこなかった地元の食材を生かす機運を今後も盛り上げていきたい」としている。【工藤哲】