強毒ヒアリ、水際強化で探知犬 初の実証実験へ

 環境省は、強い毒を持つ南米原産のヒアリを鋭い嗅覚で見つけ出す探知犬を使った初の実証実験に乗り出す。水際対策の強化が目的で、既に導入実績がある台湾から輸送し、10月にも都内港湾で実施する。日本ではこれまで107例のヒアリが確認されており、同省は「定着ぎりぎりの段階」と警戒を強めている。

 一方、政府はヒアリを含む侵略的外来種の侵入防止を図るため、貿易相手国にも輸出前のコンテナ内の調査や駆除を求める国際枠組みの策定を先進7カ国(G7)に働き掛ける方向で検討に入った。11月に東京で開かれるG7ワークショップでで各国と協議する。

 探知犬は、ヒアリが定着した台湾とオーストラリアで導入実績があり、人間が見つけにくい小さな巣や集団をにおいで嗅ぎ分ける能力を持つ。ヒアリを発見すると、「お座り」の姿勢をして人間に知らせ、捕獲わなを仕掛けて回収するよりも短時間で発見できる強みがある。

 現在の計画では、台湾のヒアリ駆除・調査会社「モンスターズアグロテック」が所有、育成したビーグル犬を日本に運び、10月中に都内の港湾施設でヒアリの調査を行う。実験では、在来アリとの区別ができるか、1日4時間程度の活動で集中力を維持できるかなどをチェックするという。

 期間は数週間程度を予定しているが、広大な港湾施設のどのエリアで行うかなどは決まっていない。ただ、日本ではまだヒアリが定着しておらず、探知犬による調査の実効性については専門家の間でも意見が分かれる。

 同省の担当者も「ヒアリを発見する精度は高いとされるが、頻繁に荷物が行き交うコンテナヤードなどでスムーズな活動ができるのか未知数な部分もある」としている。実証実験の結果を踏まえ、今後日本でも探知犬を本格導入するか検討する方針。

 日本では平成29年6月に初確認され、これまでに18都道府県で107例確認されている。船や飛行機に積まれたコンテナなどに紛れ込んで侵入し、都市部の港湾などで発見例が目立つ。

 政府は今年4月、ヒアリ類を改正外来生物法に基づく初の「要緊急対処特定外来生物」に指定。ヒアリと疑われる生物が発見されれば、通関後でも貨物や車両の移動を禁止できるほか、消毒や廃棄命令などが行えるようになった。(白岩賢太)

◆ヒアリ
赤茶色で尻にハチのような毒針がある。体長は女王アリで7~8ミリ、働きアリで2・5~6ミリ。非常に攻撃的で繁殖力も強い。刺されると、焼けるような痛みのほか、アレルギー反応で命の危険にかかわることもある。南米原産だが、1940年代に貨物船などに紛れ込んで米国などに侵入し、2000年代にはオーストラリアや台湾、中国でも発見された。

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