川辺川ダム、熊本県が容認 球磨川治水対策 「穴あき」想定、19日にも表明

 熊本県の蒲島郁夫知事が、7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策の方向性について、支流の川辺川ダム建設容認を含めた「流域治水」を最有力候補として調整していることが11日、関係者への取材で分かった。ダムの構造は、環境への負荷が低減できるとして穴あきダムを含む流水型を想定している。詰めの協議を経て19日にも県議会で表明する見通しで、近く議会側に全員協議会の開催を要請する。


 川辺川ダムを巡っては、豪雨災害後に建設の是非を巡る議論が再燃。蒲島知事がダム建設を容認すれば、2008年に知事が表明した「白紙撤回」を抜本的に転換することになる。
 蒲島知事は11日に実施した河川工学の専門家への意見聴取後、報道陣に「まだ決まったことはない。住民の生命財産と、球磨川の環境、清流の両方を守るため、全ての選択肢を排除せずに考える」と述べた。
 7月豪雨では、球磨川で戦後最大とされる1965年の洪水を上回る大規模な氾濫が発生し、流域の50人を含む65人が死亡、2人が行方不明になった。県は国土交通省、流域12市町村と共に検証委員会を設置。国交省は10月、川辺川ダムが現行計画の貯水型で存在していれば「人吉市で浸水面積を6割減少できた」とする一方、ダムだけで今回の災害は防げなかったとする推計を公表していた。
 検証委の結果を受け、流域12市町村長でつくる協議会はダム建設を含む治水策を県に要望。県議会もダム建設を求める国への意見書を可決した。
 こうした動きを受け、県はダム建設を選択肢とし、流域首長からも要望が上がっていた流水型での構造を視野に検討。市房ダムの機能強化などのハード対策とソフト対策も組み合わせた「流域治水」とする方針。
 ただ、県が流域の住民や関係団体を対象とした意見聴取会では、「ダム反対」の意見も根強く、知事の判断に注目が集まっている。
 川辺川ダムは1966年、建設省(現国交省)が球磨川の洪水防止を目的に建設計画を発表。住民の賛否が割れる中、蒲島知事による「白紙撤回」表明の翌年に民主党政権が中止方針を決めた。(野方信助)
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