2005年12月18日

紀州ジグザグ:田原湿地“保全の会”結成−−串本町の地元有志ら/和歌山

 ◇急速に進む陸地化懸念、学習・見学会開きアピール−−「希少植物守れ」
 串本町の串本沿岸海域が先月、国際湿地条約のラムサール条約に登録されたが、町内にはもう一つ、貴重な湿地がある。田原地区の田原湿地で、希少な植物が生育し、環境省の「日本の重要湿地500」にも選定されている。しかし、急速に陸地化が進んでおり、「今のうちに目を向け、保全しよう」と、地元の有志がこのほど、「田原ウェットランドの会」(宮本学会長)を発足させた。定期的に学習会や見学会を開き、田原湿地の重要性を広くアピールしていきたいという。【松田学】

 田原湿地は、下才谷(しもしゃや)、堂道、山中の3カ所に点在する湿地の総称。長年、同湿地を研究する榎本貴英・古座高教諭(42)や大学の研究者らが93〜94年に行った調査では、マルバノサワトウガラシ(ゴマノハグサ科)やスズメハコベ(同)、ミズネコノオ(シソ科)など、13種の絶滅危惧(きぐ)種を確認した。
 地元の人の話では、かつては稲作が行われ、腰までつかるような泥田だったというが、ここ数年は休耕田が増えて陸地化が進み、あぜ道に生えるセイタカアワダチソウなど陸生の植物が入り込んでいる。
 日本の重要湿地500では、世界遺産の知床半島やラムサール条約に登録された釧路湿原といった有名な湿地と並んで取り上げられているが、地元でも知る人は少ない。同会副会長で応用動物昆虫学会員の村上和弥さん(59)=町立古座小校長=は「希少生物の採集、観察をする一部の愛好家や専門家が知っているだけ。現在は、そんな点の段階だが、一本の線にし、大きな面に広げていきたい」と話す。
 先月14日に有志15人が出席し、初めての学習会を開いた。榎本教諭が田原湿地の現状や貴重性を説明。出席者から「水環境を元通りにすれば、植物は生き返る」「地権者に理解を求め、あぜの草刈りをやったりして、まずは環境整備から」といった意見が出た。
 学習会は今後、月1回のペースで開くことにしており、一般にも参加を呼び掛ける。村上さんは「『田原湿地の生態系を楽しむ』が会のキャッチフレーズ。しんどいことはやらずに、みんなで楽しくをモットーにやりたい。草刈りなどのボランティア活動を通して、環境問題に関心を持ってもらえれば」と話す。
 今月の学習会は19日午後7時から、同町田原の国民宿舎「あらふね」で。10年前と現在の田原湿地をスライドや写真で見比べたり、湿地マップ作りなどをする。入会金1000円。問い合わせは古座小(0735・72・0077)内の同会事務局、村上さん。12月17日朝刊(毎日新聞)

+Yahoo!ニュース-和歌山-毎日新聞

Posted by jun at 2005年12月18日 10:14 in 自然環境関連

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