Eliteシリーズの「パーティシペーション・アグリーメント」で揺れるBASSと選手間のコンフリクト。そして昨日発表されたWal-Mart FLW Outdoorsの新ツアーレベルのトレイル(FLWシリーズ)。BASSはバスフィッシング・トーナメントを他の競技と引けを取らないビッグスポーツへと成長させようと試みているが、どうにも空回りしている。しかるに一方、FLWはノン・エンデミック・スポンサーを多量に引き込むことで、大成功を収めている。BASSは発足から38年めを迎え、改革に乗り出そうとしている。かたやFLWは10年めにして老舗団体を追い越す勢いだ。では、何が原因でBASSは空回り気味なのかだろうか。すべては、ESPNとBASSのタッグ結成にあるようだ。
ESPNが前オーナーだったヘレン・サビアー女史からBASSを買収したのは2001年。この年のバスマスター・クラシックは前代未聞の華やかな演出を用い、バスフィッシング・トーナメントをひとつのビッグイベントとして大きく発展させた。BASSは事実上ESPNの傘下に入ったため、彼らの方向性を充分に取り入れたトーナメントを作り始める。試験的ではあったが、2003年には1月からスタートしたバスマスター・ツアーが約6ヶ月間で全10試合を行なうトレイルを敢行。最初の6試合で数十名をカット(足切り)、その後2試合が進むたびにカットを繰り返す形式を導入したが、あえなくワンシーズンで撃沈。その後、バスマスターツアーは1-3月の3ヶ月で全6試合を開催する形式を採用した。4月からはElite50シリーズを新たに開幕。このペースで2シーズンを通したが、来季からはEliteシリーズと呼ばれる全11試合を春から秋にかけて開催するトレイルをキックオフする。だが、2001年以降、BASSはESPNと手を取り合ったことで、テレビ主体のトーナメント作りに専念する。気がつけば、TV放映によって得られる特権、つまり高額スポンサー獲得に重点を置き、トーナメント運営自体は下降気味といわれている。毎年トーナメント形式が変更される事実がすべてを物語っている。
では、「TV主体のフィッシング・トーナメントはダメなのか」といえば、彼らがバスフィッシングの発展にかけた業績は大きい。つい数年前までバスフィッシングは、「田舎の腹の出たオヤジの遊び」だったのが、数年間でTime誌をはじめ、全米規模の有力雑誌や新聞にBASSの名が踊り、地上波放送のニュースやスポーツ番組でもBASSの急成長が取沙汰されている。失敗を繰り返しながらも、企業としては毎年徐々に成長していった。
だが、番組視聴率を上げるためには、視聴者を楽しませる内容でなくてはならない。以前BASSのバスマスターTVがTNNで放送されていた時代は、普通のトーナメントレポート番組に過ぎなかった。ただフィルミングして編集し、「誰が優勝しました」と伝えるだけの報道系番組だった。それがESPNとのタッグにより、一大エンターテイメント番組に変貌。(バスフィッシングに無知で無関心な)一般層が視聴しても、そこそこ耐えられる方向性を打ち立てた。番組の“お抱えプロアングラー”を中心に番組を構成し、バスプロから“バススター”を誕生させた。
こういったBASSの企業じみた方向性をジェイ・イエラスは、「BASSはテレビショーを作るために俳優が必要だった」とBassfan.com(9月1日付けDock Talkにて)で記載。「数名のスター選手とその他大勢の脇役」とも表現している。「トーナメント運営、選手のケアが重要なのか、ゼニ儲けが重要なのか」と問い、「BASSはゼニ儲けに走ってしまった。一方でFLWは、選手を第一に考えている」と、ある意味、一方的とも取れる批判記事を執筆し話題となった。
この記事はイエラスがBASSから離別することを示唆していた。先日、ジェイ・イエラスやマーク・デイビスはPAAオフィシャルサイトで来季BASS(Eliteシリーズ)に参戦しないことを表明。FLWに移籍したいと述べた。10月3日、彼らはアーウィン・ジェイコブス(FLW会長)とチャーリー・エバンス(トーナメントディレクター)と会談し、彼らが来季、BASSに参戦しない意向を伝えている。
またPAAサイトによれば、ケビン・バンダムも現在の「パーティシペーション・アグリーメント」に難色を示しており、「現行ルールのままではスポンサーとの契約に反する部分があるため、Eliteシリーズ参戦は難しい」と語った。彼はPAAのプレジデント(議長)を務める立場であるため、この意見が他のアングラーへどう影響するのか、今後の言動に注目が集まる。
ちなみにイエラス、デイビスはスキーター/ヤマハのスポンサーを受けている。スキーター/ヤマハは現在FLW Outdoorsのスポンサーで、BASSをサポートしていない。またバンダムのボートはナイトロ、船外機はマーキュリーを使用している。マーキュリーはBASSのオフィシャルスポンサーで、ナイトロ(トラッカー・マリーン)はバスプロショップス(BASSのオフィシャルスポンサー)の傘下であるため、Eliteシリーズに出場する可能性は高そうだ。
このような動きがあったためか、Wal-Mart FLW Outdoorsは早急に来季FLWシリーズのキックオフを発表。優勝賞金が10万ドルの(ツアーレベル)トーナメントを全5試合開催する。
では、ここで2006年度ツアーレベルの大会スケジュールをBASSとFLWを合わせて見てみたい(赤文字がBASS)
+Bassmaster.com
+FLW Outdoors.com
+PAA