2005年10月13日

選手がエントリーに難色/BASS Eliteシリーズ「パーティシペーション・アグリーメント・コンフリクト」 その3

yelas05conflict.jpg Eliteシリーズの「パーティシペーション・アグリーメント」で揺れるBASSと選手間のコンフリクト。そして昨日発表されたWal-Mart FLW Outdoorsの新ツアーレベルのトレイル(FLWシリーズ)。BASSはバスフィッシング・トーナメントを他の競技と引けを取らないビッグスポーツへと成長させようと試みているが、どうにも空回りしている。しかるに一方、FLWはノン・エンデミック・スポンサーを多量に引き込むことで、大成功を収めている。BASSは発足から38年めを迎え、改革に乗り出そうとしている。かたやFLWは10年めにして老舗団体を追い越す勢いだ。では、何が原因でBASSは空回り気味なのかだろうか。すべては、ESPNとBASSのタッグ結成にあるようだ。

 ESPNが前オーナーだったヘレン・サビアー女史からBASSを買収したのは2001年。この年のバスマスター・クラシックは前代未聞の華やかな演出を用い、バスフィッシング・トーナメントをひとつのビッグイベントとして大きく発展させた。BASSは事実上ESPNの傘下に入ったため、彼らの方向性を充分に取り入れたトーナメントを作り始める。試験的ではあったが、2003年には1月からスタートしたバスマスター・ツアーが約6ヶ月間で全10試合を行なうトレイルを敢行。最初の6試合で数十名をカット(足切り)、その後2試合が進むたびにカットを繰り返す形式を導入したが、あえなくワンシーズンで撃沈。その後、バスマスターツアーは1-3月の3ヶ月で全6試合を開催する形式を採用した。4月からはElite50シリーズを新たに開幕。このペースで2シーズンを通したが、来季からはEliteシリーズと呼ばれる全11試合を春から秋にかけて開催するトレイルをキックオフする。だが、2001年以降、BASSはESPNと手を取り合ったことで、テレビ主体のトーナメント作りに専念する。気がつけば、TV放映によって得られる特権、つまり高額スポンサー獲得に重点を置き、トーナメント運営自体は下降気味といわれている。毎年トーナメント形式が変更される事実がすべてを物語っている。
 では、「TV主体のフィッシング・トーナメントはダメなのか」といえば、彼らがバスフィッシングの発展にかけた業績は大きい。つい数年前までバスフィッシングは、「田舎の腹の出たオヤジの遊び」だったのが、数年間でTime誌をはじめ、全米規模の有力雑誌や新聞にBASSの名が踊り、地上波放送のニュースやスポーツ番組でもBASSの急成長が取沙汰されている。失敗を繰り返しながらも、企業としては毎年徐々に成長していった。
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 だが、番組視聴率を上げるためには、視聴者を楽しませる内容でなくてはならない。以前BASSのバスマスターTVがTNNで放送されていた時代は、普通のトーナメントレポート番組に過ぎなかった。ただフィルミングして編集し、「誰が優勝しました」と伝えるだけの報道系番組だった。それがESPNとのタッグにより、一大エンターテイメント番組に変貌。(バスフィッシングに無知で無関心な)一般層が視聴しても、そこそこ耐えられる方向性を打ち立てた。番組の“お抱えプロアングラー”を中心に番組を構成し、バスプロから“バススター”を誕生させた。
 こういったBASSの企業じみた方向性をジェイ・イエラスは、「BASSはテレビショーを作るために俳優が必要だった」とBassfan.com(9月1日付けDock Talkにて)で記載。「数名のスター選手とその他大勢の脇役」とも表現している。「トーナメント運営、選手のケアが重要なのか、ゼニ儲けが重要なのか」と問い、「BASSはゼニ儲けに走ってしまった。一方でFLWは、選手を第一に考えている」と、ある意味、一方的とも取れる批判記事を執筆し話題となった。

yelas05conflict3.jpg この記事はイエラスがBASSから離別することを示唆していた。先日、ジェイ・イエラスやマーク・デイビスはPAAオフィシャルサイトで来季BASS(Eliteシリーズ)に参戦しないことを表明。FLWに移籍したいと述べた。10月3日、彼らはアーウィン・ジェイコブス(FLW会長)とチャーリー・エバンス(トーナメントディレクター)と会談し、彼らが来季、BASSに参戦しない意向を伝えている。
 またPAAサイトによれば、ケビン・バンダムも現在の「パーティシペーション・アグリーメント」に難色を示しており、「現行ルールのままではスポンサーとの契約に反する部分があるため、Eliteシリーズ参戦は難しい」と語った。彼はPAAのプレジデント(議長)を務める立場であるため、この意見が他のアングラーへどう影響するのか、今後の言動に注目が集まる。
 ちなみにイエラス、デイビスはスキーター/ヤマハのスポンサーを受けている。スキーター/ヤマハは現在FLW Outdoorsのスポンサーで、BASSをサポートしていない。またバンダムのボートはナイトロ、船外機はマーキュリーを使用している。マーキュリーはBASSのオフィシャルスポンサーで、ナイトロ(トラッカー・マリーン)はバスプロショップス(BASSのオフィシャルスポンサー)の傘下であるため、Eliteシリーズに出場する可能性は高そうだ。

 このような動きがあったためか、Wal-Mart FLW Outdoorsは早急に来季FLWシリーズのキックオフを発表。優勝賞金が10万ドルの(ツアーレベル)トーナメントを全5試合開催する。

では、ここで2006年度ツアーレベルの大会スケジュールをBASSとFLWを合わせて見てみたい(赤文字がBASS)


1月18-21日 FLW TOUR第1戦:フロリダ州レイク・オキチョビー
2月8-11日FLW TOUR第2戦:サウスキャロライナ州レイク・マーレイ
2月24-26日 バスマスター・クラシック06フロリダ州レイク・トホ
3月1-4日FLW TOUR第3戦:アラバマ州ピックウィック・レイク
3月8-11日FLWシリーズ第1戦:ジョージア州レイク・レニアー
3月9-12日Elite第1戦:テキサス州レイク・アミスタッド  
3月16-19日Elite第2戦:テキサス州サムレイバン・リザーバー
3月30日-4月2日Elite第3戦:サウスキャロライナ州サンティー・クーパー
4月5-8日FLW TOUR第4戦:アーカンソー州ビーバー・レイク
4月20-23日Elite第4戦:アラバマ州レイク・ガンターズビル 
5月10-13日FLW TOUR第5戦:ケンタッキー州ケンタッキー・レイク
5月3-6日FLWシリーズ第2戦:ケンタッキー州カンバーランド
5月4-7日Elite第5戦:ジョージア州クラークス・ヒル 
5月18-21日メジャー第1戦:(バスマスター・メモリアル)テキサス州イーグルマウンテン・レイク
5月31日-6月3日FLWシリーズ第3戦:テネシー州オールドヒッコリー・レイク
6月1-4日Elite第6戦:オクラホマ州グランド・レイク
6月15-18日Elite第7戦:ケンタッキー州ケンタッキー・レイク
6月21-24日FLW TOUR第6戦:ニューヨーク州レイク・シャンプレーン 
7月6-9日Elite第8戦:ニューヨーク州オネイダ・レイク
7月13-16日Elite第9戦:ニューヨーク州レイク・シャンプレーン
7月27-30日メジャー第2戦:(バスマスター・アメリカン)ノースキャロライナ州レイク・ワイリー
8月10-13日Elite第10戦:メリーランド州ポトマック・リバー
8月24-27日メジャー第3戦:(バスマスター・レジェンド)アーカンソー州アーカンサス・リバー
9月14-17日Elite第11戦:ミズーリ州テーブルロック・レイク
10月11-14日FLWシリーズ第4戦:ミズーリ州レイク・オブ・ヂ・オザークス
11月15-18日FLWシリーズ第5戦:アラバマ州スミス・レイク

 現時点でFLW TOURチャンピオンシップの日程が決定していないが、それも含めれば、来季ツアーレベルの大会は全26試合に膨れ上がった。所々で大会日程が重なっているため、両団体の大会に全戦出場は無理である。
 これで名称やシリーズ名は違えど、FLW Outdoorsも2006年度は全11試合のツアーレベルの大会とチャンピオンシップを行なう。来季BASS Eliteシリーズの試合数とクラシックを合わせれば12試合だが、BASSには優勝賞金が25万ドルのメジャー大会が3試合組まれているため、全15試合。
 その他、賞金以外にもスポンサーロゴやエントリーフィーが団体によって異なるため、次回はその辺りを中心にクロースルックしてみたい。

+Bassmaster.com
+FLW Outdoors.com
+PAA

Posted by DODGE at 2005年10月13日 20:15 in 海外トーナメント:BASS, 海外フィッシング事情

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