2005年10月12日

選手がエントリーに難色/BASS Eliteシリーズ「パーティシペーション・アグリーメント・コンフリクト」 その2

agreement-elite05.gif BASSがEliteシリーズ参戦可能なポジションにいるアングラーに発送した「パーティシペーション・アグリーメント」の内容が、アングラーやスポンサーをがんじ搦めにしている話題で、今回はそのアグリーメントの第23項と第25項に触れておこう。

 第23項は「Ancillary Clothing(アンセレリー・クロージング)」という内容で、補助的衣類と訳せばいいのだろうか。要するに、ライフジャケットのようなアイテムを示す。この項では「BASSが提供するアンセレリー・クロージング(ライジャケなど)、BASSロゴやそのスポンサーロゴが入ったものを使用する」とある。しかし、アングラーの中にはすでに「当社のロゴが入ったライジャケを着用する」といった契約をしている者がいる。また「ライジャケなどの」とあるが、これが仮にレインギアも含んでいた場合、シャツについたスポンサーロゴは全部BASS仕様のレインギアで覆われてしまうわけで、しかもレインギア契約を持っているアングラーにとっては、完全な契約違反になる。
 たとえば、船外機メーカーのヤマハは、選手によって異なるが、その多くがヤマハロゴの入ったシャツを着用させたり、キャップもヤマハのものを被らせたりする契約内容が多い。またスキーター系選手は、スキーターロゴの入ったライジャケを着用する内容が契約書に含まれていたりする。彼らは決して、好きなメーカーのキャップを自由に被ったりしているのではない(中にはキャップ契約をせず、数社のキャップを順番に被る選手もいる)。第23項が契約に反する内容であるため、アグリーメントにすぐさま合意してエントリーできないアングラーがいる。

 第25項は「BASSスポンサーボート」で、かなり一方的な内容に驚かされた。Eliteシリーズ開催中にメジャー大会が3試合開催されるが、選手は4日間の日程をマイボートで競技できる。一方、通常大会の4日めは、BASSの用意したスポンサーボートに乗って決勝を競技する。この項では「スポンサーボートを使用して故障、破損などをした場合、それらは選手が責任を持って修理費用を支払う」となっている。BASSは自分たちから「このボートに乗って競技する」と決めておきながら、「壊れたら自分で直しなさい」と言っているのだ。マイボートが破損した場合、それを自分で修理するのは当たり前であっても、用意されたボートに乗船して破損させたら修理しなさいとは、あまりいい気分になれない。

 数年前からBASS CITGOバスマスターツアーの決勝ラウンドでは、主催側が用意したスポンサーボートに乗船して競技してきた。しかし、トライトンボートがスポンサーである以上、用意されるボートはトライトン製。スキーター、レンジャー、チャンピオン、ナイトロなどと契約していようが、決勝ではトライトンに乗って競技する。「これでは私たちが契約しているボートメーカーにメリットがない」と選手が唱え、メーカー側も同様に異議を申し立てた。F-1を例にいえば、キミ・ライッコネン=マクラーレン・メルセデス、ミハエル・シューマッハ=フェラーリ、佐藤琢磨=ホンダのようにチームやクルマを追いかけながら観戦、応援するファンがいる。つまり、ケビン・バンダム=ナイトロ、デニー・ブラウアー=レンジャー、スキート・リース=チャンピオンといった図式があるとき、彼らがトライトンで競技するには、何か不自然なのだ。
 そこでBASSとPAAが協議を持ち、スポンサーボートやエントリーフィー、試合数などについて話し合った。すると、Eliteシリーズの通常大会では決勝ラウンドであってもマイボートの使用が可能になった。しかしノーエントリーフィーで開催されるメジャーについては、スポンサーボートを使用する。ところが、BASSは自分たちのスポンサーと協議を持ち、その他のルールを制定。その結果、スポンサーステッカーをボートの貼ったり、ワッペンの位置を決めたり、ライジャケやスポンサーボート破損時の修理費負担をアグリーメントに含み、スポンサーの意向を含む方向性を見いだした。

 また第2項の「Angler Code of Conduct」には、団体に不利益な言動を残したり、BASSスポンサーや他の選手を批判などをし、プロフェッショナルな言動ではないと判断された場合、「罰金、賞金の没収、一時出場停止処分、除名」が言い渡される、と記されている(ちなみに、FLWにもこれと同様のルールがあり、選手を罵倒したとして、その試合結果を抹消されたアングラーが過去にいたらしい)。

 一部報道によれば、スキーターは経営上、Eliteシリーズにはデメリットが多いと判断。Eliteシリーズ枠に参戦可能なアングラーへの金銭的サポートを停止する構えにある。
 多くのボートやクルーザー、船外機メーカーの親会社であるブランズウィック社が、今春、トライトンボートを買収したため、現在彼らはEliteシリーズのスポンサーであるトライトンとマーキュリーを所有している。つまり、Wal-Mart FLW Outdoorsがジェンマー社系(レンジャー、ストラトス、チャンピオン)+ヤマハ(スキーターとヤマハ・アウトボート)であるのに対し、BASSはブランズウィック社系に収まったのだ。
 実際に、そんなスポンサー的なやり取りの狭間に立たされるアングラーが多数存在するため、彼らはEliteシリーズ参戦に難色を示しているのだった。
 トライトンボートにヤマハのエンジン、一方でスキーターボートにマーキュリーエンジンといった“親会社的にアンバランスなセッティング”では、今後のスポンサー契約に大きく響く。ブランズウィックがトライトンとマーキュリーを所有する以上、トライトンにはマーキュリーエンジンがベストなセッティングと思われても仕方がない。ボートメーカーや船外機メーカーは選手にとって大きなスポンサーであるため、彼らのサポートなにしEliteシリーズのエントリーフィーや諸経費をまかなうのはトッププロであっても無理に等しい。つまり、無理をしてEliteシリーズに参戦するか、団体を離れるかの選択に立たされているアングラーが多いのも事実である。

(BASS Eliteシリーズ「パーティシペーション・アグリーメント・コンフリクト」 その3では、コンフリクトの根源を検証)

+Bassmaster.com

Posted by DODGE at 2005年10月12日 12:39 in 海外トーナメント:BASS, 海外フィッシング事情

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