2005年02月02日

BASSバスマスターツアー第1戦 初日から最終日までの経過/レイク・トホの実態

 大森貴洋さんの優勝で幕を閉じたBASS CITGOバスマスターツアー第1戦フロリダ州レイク・トホ大会。BASSが今季レイク・トホへカムバックしたのは、2001年にディーン・ロハスが樹立したBASSの4デイ・トーナメントの最重量記録108Lb12ozを越えられる可能性があったからである。ところが蓋を開けてみると、今年のレイク・トホは、前代未聞のタフレイクと化していた。ワンフィッシュが順位を大きく左右したこの大会の初日からの経過を検証する。

 正式名称レイク・トホペカリガ、通称レイク・トホは、フロリダ州中部の町、オーランドからクルマで1時間の場所にある低地のナチュラル・フラットレイクである。大会がトホで開催される場合、水路で繋がったレイク・トホ、レイク・ハチナハ、レイク・サイプレスとレイク・キシミーの4つがトーナメント・ウォーターとなる。地元ではキシミー・チェーンと呼ばれる有名ビッグフィッシュ・レイク群だ。
 水質はクリアだが、サイプレスツリーから染み出るタンニンで通常はステイン〜ディンジー・ウォーター。透明度が高いエリアでも紅茶のように水が色づいている状態で、レイク・オキチョビーと同様にベジテーションがビッシリと湖面を覆い尽くしている。

 BASSが最初にこのレイクを使用したのは1977年のバスマスター・クラシックで、リック・クランが前年度に続き2度めの優勝を果たした。BASSは1971年にクラシックを初開催したが、最初の数年間は開催地を選手や関係者に告げておらず、ミステリーレイク方式で開催していた。ところが、「事前に知らせた方がファンが観戦できていい」と方針が変わり、この1977年大会から事前に開催地が公表されるようになった。
 次にトホがBASSの大会で使用されたのは1978年で、キシミー・フロリダ・インビテーショナルとして開催された。実はこの大会が現在のバスフィッシング・シーンに大きな影響を与えている。優勝したのはカリフォルニア州ストックトン(デルタ近郊の町)出身のデイブ・グリービーで、彼はあのディー・トーマスから直接フリッピングを伝授されたアングラーだった。もちろんこの大会におけるグリービーのウイニング・メソッドはフリッピングである。それまでフリッピングはごく一部のアングラーが使用していたテクニックだったが、グリービーの勝利によって、そのテクニックは全米に知れ渡った。

 時は経過し、2001年、バスマスターTOP150においてディーン・ロハス(奇しくも彼も西海岸出身の選手)が初日に45Lb2oz、2日めに34Lb9ozという超ビッグウエイトをマーク。45Lb2ozはBASSの1日の最重量記録(ヘビエスト・1デイ・キャッチ)となり、優勝ウエイトの108Lb12ozは4日間合計の最重量記録(ヘビエスト・ウイニング・ウエイト)を樹立。しかも最初の2日間にビッグウエイトが集中していて、それまでのヘビエスト・1デイ・キャッチ(34Lb7oz:マーク・タイラー)が歴代6位にまで降格してしまったというからレイク・トホのポテンシャルは凄まじい。そして、忘れてならないのは、これらのウエイトを支えたのがサイトフィッシングを含むフリッピングとショートレンジのピッチングであったことだ。
 ちなみに、この大会では30Lb以上が8回、20Lb以上が29回、そして21尾の10Lbオーバーがウエイインされた。

 これでレイク・トホがどれだけ華やかな経歴を持っているかわかっていただけたであろう。それゆえに出場アングラーのみならず、ファンもツアー第1戦でビッグウエイトの続出を期待した。しかし結果をご存じのように、今大会では1度もビッグストリンガーを目にすることはなかった。それには3つのネガティブ要素が重なったからだった。
 まず、昨年キシミーチェーンでは、大がかりなレストレーション・プログラム(湖沼再生事業)が着手された。レイクの水位を半分ほどまでドローダウンさせ、乾いた底からヘドロや堆積物をブルドーザーで取り除き、ソリッドなハードボトムを露出させた。これにより例年であればレイクの真ん中付近にまで群生しているベジテーションもなくなり、レイク・トホは、まったく別の表情を見せることになったのである。
 次に先日開催されたFLW TOURレイク・オキチョビー大会の状況と同様に、昨秋フロリダ州に襲来したハリケーンの影響で、レイク・トホのウイードラインが大きく様変わりしたことが挙げられる。
 そしてアングラーがもっとも恐れたのは天候の変化だった。今年の冬は近年希に見る寒さで、産卵を意識した多くのバスが1発の寒冷前線の通過でシャットダウンされてしまう。大会に参戦した清水盛三さんによると、本戦3日前に寒冷前線が通過し、早朝の気温が0℃くらいにまで低下したらしい。実際には本戦中の昼間に20℃を越える日もあったが、試合直前に前線が通過したために、バスをナーバスにさせた。

 この影響は、本戦初日のウエイトがすべてを物語っている。首位に立ったケビン・ワースのウエイトは15Lb5oz。10Lb以上を持ち帰ったのはたったの18名。157名中20名がリミットメイク、18名がノーフィッシュで帰着した。20Lb以上を持ち帰る可能性が充分にあるフィールドだけに、この釣果は非常に珍しいケースといえる。
 初日のハイライトとしては、大森貴洋さんが4尾で13Lb6ozをウエイインし3位に、田辺哲男さんが5尾で11Lb6ozをウエイインし10位につけたことだろう。大森さんはバスマスター・クラシック2004のチャンピオンとして注目されていたが、なにより昨シーズンバスマスターツアーで不本意な成績を残した田辺さんにとって初日10位の成績は素晴らしいスタートダッシュだった。
 そして2日め、アングラーはさらに厳しい状況と相まみえた。初日の夜中から朝にかけてコールドフロント(寒冷前線)が通過。早朝の降雨も重なり、気温が急激に低下した。それに伴いバスの活性も著しく低下し、パターンを見失う選手が続出した。
 そんな中、大森貴洋さんが7パウンダーを含む5尾で17Lb15ozをウエイイン。またこの17Lb15ozは大会4日間を通してのヘビエスト・ウエイトに輝いた。
 全体的に釣果が落ちる中、グッドウエイトを持ち帰ることに成功したロン・シャフィールドは初日の54位から5位に、70位だったスコット・ルークが6位に、79位だったジェイ・イエラスが10位に入った。
 決勝に進出する12名がこれで決定したわけだが、まさに錚々たるメンツが集結した。ロン・シャフィールド(1999メガバックス優勝)をはじめ、デビッド・ウォーカー(1999FLW AOY)、ウー・デイビス(2000クラシック優勝)、ケビン・バンダム(2001年クラシック優勝)、ジェイ・イエラス(2002クラシック優勝)、ジェラルド・スインドル(2004 BASS AOY)、大森貴洋さん(2004クラシック優勝)と12名中7名がビッグタイトル保持者だったのだ! これほど豪華な顔ぶれは、Elite50の決勝であったとしても珍しく、逆にいえば、タフな状況下でこそ真の実力者がトップ争いを展開することの証明だったといえるだろう。
 このほか日本人アングラーでは、田辺哲男さんはウエイトをのばせず22位でのフィニッシュ。桐山孝太郎さんが66位タイ、宮崎友輔さんが127位タイ、清水盛三さんが151位で大会を終えた。

 大会3日め、決勝初日、アングラーは前の2日間と比べさらに厳しい状況に遭遇した。昨日の雨と低気温、曇り空から一転し、この日は晴れ。しかし無風に近い状態が続いたため、競技時間の多くがベタ凪状態となった(レイクによって多少の差はある)。しかも予報では雨だったが実際には晴天になったため、アングラーはパターンのシフトにも充分気をつけなければならなかった。
 さて、この日のトップウエイトはジェラルド・スインドルがウエイインした12Lb4ozであったが、2日めまでの合計ウエイトからトップには立てず、11Lb5ozをウエイインした大森貴洋さんが首位をキープするかたちで最終日を迎える(BASSルールにより、決勝でウエイトがゼロから再スタートするのではなく、2日めまでのウエイトが決勝にも持ち越しになって換算される)。
 全体的に釣果が渋いため、「(最終日にバスを残しておくのではなく)目一杯釣ることに励んだ。それでも午後3時にやっとリミットが揃った」と大森さんは述べている(その後2尾を入れ替え)。
 
 決勝最終日には12名からさらに6名に絞られて競われる。首位から大森貴洋さん、デビッド・ウォーカー、ジェラルド・スインドル、ロン・シャフィールド、ジェフ・レイノルズ、テリー・スクローギンスの6選手が最終日に臨んだ。
 首位の大森さんとウォーカーの差は5Lb10oz。レイクのタフなコンディションから、大森さんがリミットを揃えられればそのまま優勝するのではと囁かれた。
 
 そして最終日、昨日の下位から順にウエイインが進行。ウォーカーが5尾で11Lb7ozをウエイインしトータルを48Lb7ozにまで伸ばす。大森さんの3日めまでの合計が42Lb10ozであったため、約7Lbをウエイインできれば優勝する。
 この日、大森さんがウエイインしたのは4尾。しかし。持ち帰った8Lb1ozはウォーカーの猛攻をねじ伏せるには充分なウエイトだった。大森さんはトータルウエイトを50Lb11ozに伸ばし、バスマスター・ツアー第1戦の頂点に立った。
 ちなみに大森さんはFLW TOUR第1戦で146位に終わっている。
 またビッグウエイトで盛り上がった2001年バスマスターTOP150と比較すると、今大会の大森さんのウエイトは11位に相当する。
 ツアー第1戦を制覇した大森さんは「クラシック優勝後、非常に忙しくて、プレッシャーもあって大変だった。今までで一番調子がいい感じがする。キャリアのピークに達したような感じだ」と語った。
 
 大森さんの優勝と2位でフィニッシュしたデイビッド・ウォーカーを比較してみると、全体的にはウォーカーが安定したウエイトを持ち帰っている。では、どこで差がついたのかといえば、大会2日めのビッグフィッシュにあり、あの17Lb15ozが明暗を分けた。
 決勝に進出したほとんどのアングラーがフリッピングをメインにパターンを組んでいたようだが、大森さんは「“ファスト・ムービング・クランクベイト・タイプ・ベイト”を使用している」と語っていた。2月第2週めにFLW TOUR第2戦レイク・トホ大会を控えているため、ウイニング・パターンの詳細を語っていないが、Bassmaster.comは使用したルアーをスポンサーでもあるラッキークラフト社のリップレス・クランク(バイブレーションブラグ)と記載している。しかし一部の報道は、こちらもスポンサーであるダイワ社のT.D.バイブレーションと伝えている。
 
 2月3-5日の日程でフロリダ州ハリスチェーンを舞台にバスマスターツアー第2戦が開催される。昨年のハリスチェーン大会で大森さんは12位でフィニッシュしている。今年はどのような展開を見せてくれるのだろうか。

+Bassmaster.com

Posted by DODGE at 2005年02月02日 11:35 in 海外トーナメント:BASS

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