2005年02月02日

FLW TOUR第1戦の試合経過とパターン

 希に見る大波乱で多数の選手が苦戦を強いられたWal-Mart FLW TOUR第1戦フロリダ州オキチョビー大会。並木敏成さんが4位でフィニッシュするという好成績を残したものの、バスマスター・クラシック覇者の大森貴洋さんやFLW TOUR 2004 AOYの深江真一さんらはことごとく下位に低迷し、現状におけるレイクのタフ化が浮き彫りとなった。先日当サイトで掲載した清水盛三さんの「U.S. TOURNEY FILE」にもあったように、多くの選手がモンキーボックスと呼ばれるエリアに集中し、このエリアを征する者が優勝するといったものだった。ではモンキーボックスのポテンシャルを主題に、FLW TOUR第1戦を振り返ってみたい。

 昨年のアメリカ、特にフロリダ半島からメキシコ湾に面した南部域は、日本と同様に、台風の当たり年となった。例年であればワンシーズンに多くて2つの台風が通り過ぎる。しかし2004年度は8月中旬にメキシコ湾で発生したハリケーン・チャーリーを先発に、フランシス、アイバン、ジェーンと7週間で4つの台風がフロリダ半島を襲撃。BASSでは事故を防ぐため2大会を延期にした。被害は台風が直撃したフロリダ州やアラバマ州南部の湖畔住宅に多く、自家用桟橋は破壊され、ボートは陸に打ち上げられ、樹木は倒れ、暴風雨によって全壊・半壊した家屋は数知れない。
 そんな強力なハリケーンは、レイク・オキチョビーにも多大なる悪影響を与えていた。暴風雨によってウイードやブッシュが引きちぎられ、増水、そしてレイクがシャローなためにドロが巻き上げられ、広い範囲でいまだ濁りが落ち着いていない。夏の台風シーズンが終わっても、アメリカ最南端のフロリダではメキシコ湾やカリブ海で発生した低気圧と北部から下りてくる寒冷前線が接触するケースが多く、普段は温暖でも突如として突風や寒気に見舞われることも珍しいことではない。
 特に12〜2月にかけて、いわゆるフロリダにおけるバスのスポーニングシーズンは、1年間でもっとも天候が不安定な時期といえる。

 FLW TOUR第1戦を混戦にさせた要因は、悪化した水質がいまだ戻っていなかったこと、そしてFLW TOURの前哨戦として開催されたエバースタート・サウスイースト第1戦の必勝パターンにあった。
 ダレル・ディーカの初優勝で幕を閉じたサウスイースト第1戦であったが、初日、2日めとJTケニーが横綱相撲を披露。ビッグウエイトを持ち込み、オキチョビー・マスターとしての意地を見せつけた。そしてケニーとともに決勝に進んだ10名中7名がモンキーボックスをメインエリアとしていた。決勝ではこの7名がこのエリアにいたが、予選ラウンドではなんと数十名のアングラーがこのエリアに集結していたのだ。
 この情報がその2週間後に大会を控えたFLW TOURアングラーに伝わっていないわけもなく、多くのビッグウエイトがモンキーボックスから続出したために、最注目エリアとなった。

 さて、このモンキーボックスとはレイク・オキチョビーの南西部にあたるエリアを指す湾の名称で、この湾周辺が今回もっともホットだったエリアである。湾の南側がムーンシャイン・ベイ、湾の北側(岬状になっていて、その向こう側)がフィッシュイーティング・ベイと呼ばれている。この湾を中心としたエリアだけが風にプロテクトされる地形だったために水質がすこぶる良好だった。またここはドロ系ボトムではなく、ハードボトムだったことが産卵を意識したバスを一点集中させたともいわれている。
 最良のファクターが密集したモンキーボックスの他にプロダクティブなエリアはないのかといえば、例年であれば存在する。昨年はウイードの発育がよかったため、レイク全体にバスが散り、北岸のノースショアや南岸のサウスベイなどいたるエリアでビッグウエイトが記録された。そんな“過去によかったエリア”に出向いたアングラーも多かったようだが、モンキーボックスに勝るエリアはなく、ここ以外ではノーフィッシュで帰着するアングラーもいた。それほどこのエリアにバスが集中していて、ここ以外のバスはほとんど口を使わなかったといえる。

 2003年度バスマスター・クラシックを制覇した後はBASSに専念していたマイケル・アイコネリであったが、今シーズンからFLWに復帰。しかし彼はこの復帰戦で190位(2日間で4Lb)に終わっている。アイコネリは「エバースタートの勝者がモンキーボックスから出たと聞いた瞬間、FLWでも銀座になるだろうと思った。だからあえて外したし、銀座の中で釣りをするのは私のスタイルではない。しかしオキチョビー戦を通じて学んだことがある。銀座から遠ざかることは戦術として素晴らしく、どのレイクにも当てはまるが、フロリダだけは例外だ。スポーニングのパターンを考慮すると、一番ボートが浮かんでいるエリアが一番ホットで、そこで釣り勝たなくては試合でも勝てない」と語った。

 FLW TOUR第1戦初日、エバースタートを5位でフィニッシュしたルーキー、ボビー・レインが23Lb8ozで首位に立った。エリアはモンキーボックスで、レインによると常に入れ替わり立ち替わりボートが行き来する状態。100艇以上のボートが浮かんでいたという。
 2タイムスAOYのクラーク・ウェンドラントはモンキーボックスではなくノースショアに向かい、ノーフィッシュで帰着。
 2日め、スティーブ・ケネディーが底力を見せつける。前日は10Lb1ozで39位につけていたが、モンキーボックスから25Lb15ozというビッグストリンガーを持ち帰り、予選ラウンドのトップに躍り出た。ちなみにケネディーはエバースタートでも同じような快進劇(初日103位から2日め4位へのジャンプアップ)を披露している。
 この日2番手のウエイトを持ち帰ったのは並木敏成さんで、21Lb11ozをウエイイン。72人抜きで初のトップ10入りを達成した。

 決勝初日を迎えたこの日、日々天候が目まぐるしく変わり、水温は上昇したがバイトが極端に少なくなった。10名中リミットメイクを達成したのは6名。1名がノーフィッシュで帰着した。期待の並木さんは1尾のみのウエイインとなり8位に。2日めからの好調を維持したスティーブ・ケネディーがトップを守り抜いた。ケネディーのウエイトは17Lb4ozと現状のオキチョビー・ポテンシャルを考慮すれば、まずまずのウエイトといえる。しかし忘れてはならないのは、ここがフロリダであるということ。1尾のビッグフィッシュで順位が変動し、大逆転も大いにありうる。
 
  そして最終日、レイク・オキチョビーがついに火を噴いた。決勝初日を6位で折り返したケリー・ジョーダンは、最終日、モンキーボックスへ直行。自分のGPSを積んでいなかったため、濃霧の影響もあり、マイエリアにたどり着けなかった。そこに丁度並木さんが通りかかり、ジョーダンは「俺達が釣っていた場所はどの辺だった?」と聞いたという。並木さんがあっちの方だと示し、ジョーダンはやっとの思いでエリアに辿り着く。
 そのスポットでキャストを開始するが、バイトがなく、50ftほど移動し、さらに分厚いウイードマットを撃ちはじめた。すると、ウイードポケットから7パウンダーがヒット、続けて2パウンダーが釣れた。ボート1艇分も離れていないウイードポケットを発見すると、今度はそこから6パウンダー、そしてダメ押しともいえる8パウンダーをキャッチした。この小さなワンスポットを攻略するのに要した時間はわずか30分。ジョーダンはこの日、リミットに1尾満たない4尾のみのウエイインとなったが、23Lbというモンスター級ストリンガーを持ち帰り、2位のスティーブ・ケネディーに約4Lbの差をつけてFLW TOUR初優勝を成し遂げた(BASSでは3度の優勝経験あり)。
 さて、初の決勝進出となった並木敏成さんは、最終日、リミットメイクに成功。12Lb3ozをウエイインし、2日間トータルで19Lb5ozをマークしたものの3位に入賞したディーン・ロハスに3oz及ばず、4位で終了。2003年から本格参戦を果たしたFLW TOURにおいてこの4位は、並木さんの最高位フィニッシュとなった。

+FLW Outdoors.com

Posted by DODGE at 2005年02月02日 10:53 in 海外トーナメント:FLW

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