環境省の「良好な水環境保全・活用モデル事業」の1つ
群馬県館林市で8月30日(土)、第1回「茂林寺沼湿原100年会議」が開催された。この会議は、環境省の「令和7年度 良好な水環境保全・活用モデル事業」に採択された「茂林寺沼湿原保全・活用100年プロジェクト」(館林市教育委員会)の一環で、貴重な湿原を未来に継承するための取り組みが幕を開けた。
環境省のモデル事業は、河川、地下水、湧水、湖沼、汽水湖、池、田んぼ、湿地、流域などが対象。水質、生物の豊かさ、景観、文化、地域の活動など多面的に水環境を把握し、良好な環境の創出につなげ、地域課題の解決と人々のウェルビーイングの向上を目指す。今年度は全国21地域から応募があり、以下の5地域が選定された。そのうちの1つが、「茂林寺沼湿原 保全・活用100年プロジェクト」である。
希少な低層湿原とは
環境省のモデル事業で選定された地域を見ると、河川が3、田んぼが1、湿原が1となっているが、そもそも普段あまり耳慣れない「湿原」とはどんなところなのか。
湿原とは、水が多い土地に植物が茂り、枯れた植物が分解されずに泥炭として積もった場所を指し、水量や栄養の違いによって大きく「低層湿原」「中間湿原」「高層湿原」に分けられる。低層湿原は地下水や川の水が流れ込み、比較的栄養が多いためヨシやスゲ類が育ち、多様な生きもののすみかとなる。高層湿原は雨水を水源とするため栄養が乏しく、ミズゴケが広がる独特の景観をつくる。中間湿原はその中間的な特徴を持ち、多様な植物が入り混じる。
茂林寺沼湿原はこのうちの低層湿原にあたり、東日本に残る数少ない低層湿原として注目されている。
しかし、環境の変化により姿を変えていく可能性がある。館林市教育委員会『みんなで見守る地域の宝 茂林寺沼湿原』(2024年)によると、湿原は水不足や外来生物の侵入など、いくつもの課題を抱えている。水不足について言えば、宅地開発で雨水の浸透量が減少したことや、かつて湿原に注ぎ込んでいた小川が河川改修で失われたことが、大きな要因になっている。
多様な参加者が未来を語る
会議には地域住民や活動団体、企業、高校生や大学生など約30名が参加。冒頭では一人ひとりが「茂林寺沼湿原の好きなところ」を語り、その後「20年後の湿原はどうあってほしいか」「そのために何ができるか」をテーマにグループで意見交換した。
会議の記録には「グラフィックレコーディング」が使われ、発言がイラストとテキストでリアルタイムに描き出された。色彩豊かなグラレコは、会議の雰囲気をそのまま伝えると同時に、参加者の意識を共有する役割を果たすだろう。
会議と現場を往復する「維持管理トライアル」
100年会議の大きな特徴は、話し合いと現場体験を往復する仕組みにある。10月と12月には「維持管理トライアル」として湿原に入り、外来種除去やヨシ狩りを体験する予定だ。作業をしながら「なぜこの作業が必要なのか?」「どのように行うのが効果的なのか?」などを考え、その体験を会議に持ち帰って再び議論する。この取り組みによって、参加者が湿原保全を自分ごととして考えられるようになることが期待されている。
会議後には、初めて顔を合わせた参加者同士が言葉を交わし、日頃の活動を専門家に相談する姿や、異なる分野の参加者が情報を交換する様子もあった。湿原を通じて課題や関心を共有する、小さな交流の芽が育ち始めている。
「茂林寺沼湿原100年会議」は今後も継続的に開かれ、議論と現場体験を重ねる中で、湿原の未来像を世代や立場を超えて描いていく。
