琵琶湖で激減のホンモロコ 漁獲量回復の兆し 食べる文化復活課題に

 1990年代半ばから激減していた琵琶湖の固有種ホンモロコの漁獲量が増加の兆しを見せている。滋賀県や漁業者などが15年以上、ホンモロコ資源の回復を図ってきた効果が表れたとみられる。しかし、長年の漁獲低迷でホンモロコを食べる文化が薄れてしまい、需要が戻らないという新たな問題が浮上している。

 県によると、ホンモロコの漁獲量は90年代前半には200トン以上あったが、95年以降は急減して2004年にはわずか5トンにまで落ち込んだ。

 県は06年度からホンモロコ資源回復事業に着手。稚魚800万~1000万匹の放流のほか、産卵場所となるヨシ帯の造成、天敵の外来魚駆除に取り組んだ。漁業者はホンモロコの繁殖期である5~6月を自主的に禁漁とした。西の湖(近江八幡市)、伊庭内湖(東近江市)などは、産卵期の4~5月に禁漁区となった。国土交通省琵琶湖河川事務所も急激な水位低下によるホンモロコの卵の死滅を防ぐため、環境に配慮した水位管理に努めている。

 さまざまな取り組みの結果、ホンモロコの漁獲量は近年少しずつ上向き、20年は33トンに。推定資源量も07年に20トンだったが、19年以降は100トンを超え、21年は190トンにまで回復した。

 沖島(近江八幡市)の漁業、小川吉嗣さん(71)は「3月、4月に卵をもったホンモロコがたくさん取れるようになった。15年前では考えられないこと。大分増えてきた」と、ホンモロコの復調を実感する。

 しかし、県水産課は「長年のホンモロコ低迷による取り扱い店舗の減少が、漁師の取り控えにつながっている。ホンモロコを消費する文化が薄れ、重要が戻らない」と危機感を抱く。  需要が減ったためホンモロコの単価は、かつての1キロ当たり1000~1500円が、現在は500~600円程度に下落している。新型コロナウイルスの感染拡大による外食産業への打撃も影響しているという。「漁獲量が増えても、食べてくれる人が少ないと(漁師が)ホンモロコを取りに行かない」と小川さんは話す。【庭田学】  

◇魅力発信のシンポジウムも開催

 県は28日、琵琶湖産ホンモロコの魅力を発信するシンポジウムを県庁で開催した。漁業者や加工業者がホンモロコ漁や流通などについて発表したり、料理人がおいしい食べ方を紹介したりした。

 「ホンモロコの流通・食文化を取り戻そう」というテーマで、県と県漁連、県水産加工業協同組合が主催した。オンラインを含め約120人が参加。三日月大造知事は冒頭のあいさつで「ホンモロコの魅力・可能性をもう一度広める起点にしてほしい」と述べた。

 近江八幡市の日本料理店「ひさご寿し」店主、川西豪志さんは「淡水魚をおいしく料理するコツ」をテーマに発表し、同市の「奥村佃煮」社長、奥村龍男さんはホンモロコ加工の歴史などを紹介。県漁連の佐野高典会長はホンモロコの資源管理の取り組みなどを発表した。【庭田学】

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