滋賀県の「うみのこ」学習をお手本に、中米ニカラグアの首都マナグア市の児童が同国で2番目に大きいマナグア湖で環境を学ぶ「UMINOKO」を実施している。県は、UMINOKOに全面協力する事業計画を国際協力機構(JICA)に提案し、「草の根技術協力事業」として採択された。三日月大造知事は「うみのこ」が世界に広がることを期待している。
県内の小学5年生全員を対象にした学習船「うみのこ」での環境学習は1983年に始まり、これまでに63万4061人が体験している。1泊2日で、顕微鏡や水中カメラを使った琵琶湖の生物の観察や琵琶湖の食文化、ヨシの活用などを学んでいる。学習は教育課程に組み込まれ、全国でも類を見ない教育プログラムとなっている。
マナグア湖は面積1053平方キロで、琵琶湖(669平方キロ)の1・5倍の大きさ。しかし、長年にわたる生活排水や産業廃水の流入で極度に汚染が進み、飲水や農漁業での利用ができないという。
ニカラグア版うみのこは、JICAニカラグア事務所の日本人職員がマナグア湖の汚染状況を見たことから始まった。職員は県の琵琶湖保全・再生への取り組みやうみのこ学習を知っていたことから、2020年に県とも相談し、子供への環境教育は大人にも良い影響を与えると、同市に湖上での環境学習を提案。理解を示した同市は21年からUMINOKOを始め、4年間で小学4、5年生約1200人が参加した。
同市にはうみのこのような専用の学習船がないため、観光客船を借りて、約2時間の日帰り学習だが、この湖上学習を「UMINOKO」と呼んでいるという。子供たちは船内でマナグア湖の水や生き物を観察して、水をきれいにするには何をしたらいいかなどをクラスメートと話し合っているという。
県は24年11月に滋賀大、国際湖沼環境委員会(草津市)と共に、教育プログラムの充実や指導者の育成、技術支援を現地の教育機関などと連携して進める事業計画(総事業費約6000万円)をJICAに提案し、このほど採択された。県などは、マナグア湖が抱える課題解決のため、環境学習のノウハウなどを生かした基本計画を策定し、教材作成や人材育成、住民意識の改善などを目指す。担当者の相互訪問も実施するという。
三日月知事は定例記者会見で「湖沼の持続可能な保全に各国が力を合わせて取り組む先駆けとなる。ニカラグア版うみのこを成功に導き、他の国、地域にも広がることを期待している」と意義を強調した。【北出昭】