外来種の中でも、特に生態系や人の生活、農林水産業などに被害を及ぼすリスクが高い生物は「特定外来生物」に指定され、厳格な規制対象となっている。昆虫では毒性が強いヒアリやセアカゴケグモ、魚類ではブラックバス、両生類ではウシガエル、哺乳類ではアライグマなどが有名だ。条件付きで飼育ができるアメリカザリガニやアカミミガメ(ミドリガメ)は子どもから大人までおなじみの特定外来生物。だが、意外と知られていないのが植物の特定外来生物だろう。身近に生息しているものも少なくないが、駆除や処分に多額の費用がかかり自治体などを悩ませている植物もある。庭仕事や散歩中などに見つけたら適切な方法で対処しよう。
(杉原健治:フリーライター)
■ 熊本で大繁殖したウォーターレタス
最近、熊本県で問題となったのが特定外来生物に指定されている「ウォーターレタス」だ。水草の一種で繁殖が高く、熊本県中部を流れる加勢川で大発生して、まるで草原かと勘違いするほどに水面を緑一面に覆ってしまった。
ウォーターレタスはアフリカ原産の多年生の水草で、日本名では「ボタンウキクサ」と呼ばれている。もとは観賞用として100年ほど前に日本に持ち込まれ、現在では西日本を中心に全国で確認されている。
水に浮くレタスのように見えるためウォーターレタスと呼ばれているが、食べると口腔内に炎症を引き起こす可能性がある「カルシウムオキサレート」という化学物質が含まれている。
2023年には、熊本市と国で合わせて9600万円もの費用をかけてウォーターレタスの除去・焼却を実施。しかし、いまだ根絶にはいたっていない。
■ キレイな見た目に要注意! オオキンケイギク
日常の中でも、意外と気づかないところに特定外来生物はいる。たとえば5月から7月にかけて河原や土手などに咲く「オオキンケイギク」は、コスモスに似た見た目をしているが特定外来生物だ。
オオキンケイギクは北アメリカ原産の多年草で鑑賞用として持ち込まれ、現在は野生化したものが全国各地に分布しているという。こちらも繁殖力が非常に高く、在来の植物の生育を脅かす。
直径5センチほどの黄色い花で一見綺麗な見た目をしているが、特定外来生物に指定されているため栽培や運搬は禁止されている。うかつに持ち帰ってしまうと法律違反となるので注意が必要だ。
■ オオハンゴンソウ、日光でコロナ禍に大増殖
オオキンケイギクと同様に、公園などの身近な場所に存在するのが「オオハンゴンソウ」という植物。こちらも北アメリカ原産の多年草だ。
この植物も黄色い花をつけ、夏になると2メートルもの高さになる。一見すると花が咲く普通の雑草のようで、特定外来生物だとは気づきにくい。
栃木県など3県にまたがる日光国立公園では毎年ボランティアを募り、1976年からオオハンゴンソウ除去のため活動を行ってきた。しかしコロナ禍で2020年と2021年は活動できなかったため、再びオオハンゴンソウが増殖してしまった。
2024年に日光市などによって行われた除去活動には260人のボランティアが参加し、オオハンゴンソウをはじめとした2660kgの外来植物を除去している。
■ 見つけたら正しい処置が必要
特定外来生物に指定された植物は、種子が成熟する前に刈り取ったり、根っこから完全に除去したりする必要がある。自宅の敷地内などで見つけたときは自治体のルールに従って、ゴミの日などに処分しよう。ゴミとして処分する場合は、ゴミ袋で密閉して種子などが飛散しないように対策することが重要だ。
自宅以外の場所で特定外来生物の植物を発見した場合は、不用意に抜き取ったりせず、発見場所の管理者や行政機関に相談するのがもっとも確実な方法だろう。
特定外来生物は、栽培や野外に放つなどの行為はもちろん、生きたままの運搬も法律で原則禁止されている。違反した場合は、個人の場合3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人の場合は1億円以下の罰金が科されることもあるため、くれぐれも注意してほしい。
杉原 健治