京都のタケノコ産地に忍び寄る外来種 全国初の注意喚起発表、生産者は戸惑い

 京のブランド野菜「京たけのこ」の産地で知られる京都市と長岡京市で栽培するタケに、海外原産のシナチクノメイガの寄生が確認されたとして、京都府病害虫防除所(亀岡市)は1日、病害虫発生予察特殊報を発表した。シナチクノメイガは近年侵入し、発生はこれまでに10都府県で確認されているが、農家に注意喚起する特殊報の発表は全国で初めて。

 シナチクノメイガは中国南部原産のチョウ目ツトガ科のガで、成虫は約3~4センチ。幼虫の体長は3センチほどで、淡緑~淡赤色の体が特徴。幼虫が葉を食べ、葉をとじ合わせてさなぎになる。食害を受けた葉は生育不良を引き起こし、色が褐色に変わったり、枯れたりする。

 2020年に愛知県で初めて確認され、神奈川県、茨城県、静岡県など関東圏をはじめ、大阪府、兵庫県でも確認されている。京都府内では今年7月からタケの葉枯れや褐変の症状が見られていた。

 防除所によると1日現在、タケノコ(野菜類)におけるシナチクノメイガに適用できる農薬はないといい、虫やとじ合っている葉を見つけたら、可能な限り除去するよう求めている。

 一方、タケノコ農家からは、高齢化による対策の難しさを訴える声が聞こえる。京都市西京区で長年京たけのこを栽培する男性(77)は「高齢で高所での作業は厳しい」と胸の内を明かす。竹の高さは約10メートル前後。竹林は傾斜地にあることが多い上に、農家のほとんどは70代以上といい「自然相手のことなので特効薬がないのは仕方ない」としつつも「今回の被害をきっかけに京たけのこの生産をやめる人が出ないか」と危機感を示す。

 タケノコの栽培やタケノコ食品の加工を行う「小川食品工業」(長岡京市)の小川修司社長(68)は「竹枯れを招いた生物が何なのか分からなかったので、同定されたことはよかった。駆除方法についてもはっきり示してほしい」と話した。

 一方で、新型コロナウイルス禍からタケノコの売り上げが回復しつつある時期に今回の被害に見舞われ「タケノコ栽培をやめる農家が加速度的に増えないか」と心配そうに話した。「行政には対策を取る農家への支援とともに、風評被害が広がらないよう情報発信をお願いしたい」と求めた。

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