奄美大島北部を中心に発生している外来カイガラムシ(和名・ソテツシロカイガラムシ)によるソテツ被害で、龍郷町は安木屋場集落にある群生地の対策を進めている。群生地は私有地(民有地)のため集落による作業にあたっての助成金を計上し、被害葉の切除や薬剤散布を実施。作業により幹だけが残った状態の箇所が多く、景観を一変させている。
群生地(面積約15万平方㍍)は集落を見下ろすようにソテツが山の斜面を覆い尽くし、国立公園第2種特別地域で観光客も訪れる景勝地。昨年9月、自生するソテツの葉に外来カイガラムシが付着しているのが確認され、奄美を代表するソテツの景勝地を守ろうと町は対策に乗り出した。
町企画観光課によると、観光振興費としてソテツ群落除伐助成金を計上。繰り越し分を含めて2023年度は約2千万円に及んだ。24年度も500万円を計上しており、いずれも補助事業なしの町単独予算だが、県補助が活用できないか検討が進められている。町助成金を活用しての作業は集落が業者に委託。阿世知正博区長によると、当初は森林組合に発注したが、町内の建設業者がほとんどの作業を担っているという。山の頂上部分からグラウンドに近い裾野部分にわたって被害葉の切除、適しているとされる浸透移行性タイプの液剤が散布されている。
阿世知区長は「残っているのは集落に近い部分。7月末の町議会臨時会で予算(助成金)が通ったことから、業者による作業が近く行われるのではないか」との見通しを示し、「問題は作業後。今年の春先、新芽が出ても被害が見られただけに、外来カイガラムシによる加害を抑えることができるかどうか。幹だけの状態だけに、それが枯れてしまわないか心配。あれだけのソテツ。健全葉が出ることなく枯れてしまった場合、山の斜面が露出した状態になり大雨で土砂崩れが起きないか。枯れないことを願うばかり」と語った。
◆メモ
外来カイガラムシ(アウラカスピス・ヤスマツイ=英語表記の通称CAS〈キャス〉) カメムシ目マルカイガラムシ科の昆虫。タイなど東南アジア原産。急速に分布を拡大し、中国南部、香港、ベトナム、シンガポール、台湾、ハワイ、フロリダなど世界各地で確認されている。ソテツの幹や葉に寄生し、吸汁する害虫。増殖力が高く、被害木が枯死することもある。国内では、奄美大島や沖縄県の一部の地域で発生が確認されている。