「非常に深刻な問題」 北海道の在来種マルハナバチ、減少の背景判明

 根室半島など北海道東部のごく限られた地域にしか生息せず、環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に指定されている「ノサップマルハナバチ」の減少について、ハウス栽培のトマトの受粉などに使われている特定外来種の「セイヨウオオマルハナバチ」の雄との交雑が背景にあることが、玉川大と京都産業大の共同研究で明らかになった。ドイツの学術誌・サイエンティフックリポーツの7月17日付オンライン版で公開された。

 研究グループは、セイヨウオオマルハナバチの生態リスクを調べるため、2009~19年、野外で採取した在来種2種(ノサップマルハナバチ141匹、エゾオオマルハナバチ250匹)の女王バチの受精囊(のう)から精子を取り出してDNAの塩基配列を分析。計30匹(うちノサップマルハナバチ13匹)からセイヨウオオマルハナバチの雄の精子が検出され、自然界での交雑が分かった。

 在来種は種ごとの性フェロモンの違いによって異種間の交尾が起きない仕組みがある。だが、セイヨウオオマルハナバチの雄が出す性フェロモンは、在来2種と同じ脂肪酸エステルだったため、セイヨウオオマルハナバチの雄が在来種の女王バチを誘引し、交雑していることも判明。雑種は生まれないものの、子孫を残すことができず、在来種の個体数減に大きな影響を与えているという。

 玉川大学術研究所ミツバチ科学研究センター所長の小野正人教授(昆虫学)は「外来種と在来種の交雑は深刻な問題で、絶対にハウスの外に逃げないように使用上のルールの徹底が重要」と警告を鳴らした。そして将来的に「受粉用に在来種のマルハナバチを選抜育種して導入する方向に変えていくべきだ」と提案した。【本間浩昭】

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