滋賀県立琵琶湖博物館は2日、同県高島市の安曇川で、北米原産の外来種ミズワタクチビルケイソウが近畿地方で初めて確認されたと発表した。九州や関東などの河川で大繁殖し、アユが激減した事例があるという。県は繁殖拡大を防ぐため、釣り具などの「消毒」を遊漁者らに呼びかけている。
福井県立大海洋資源生物学部4年、麦倉佳奈さんが2022年5月、琵琶湖に流入する安曇川でミズワタクチビルケイソウの群体を見つけた。第一発見者の麦倉さんと琵琶湖博物館総括学芸員の大塚泰介さんらが論文を発表した。
同館と滋賀県水産試験場などによると、ミズワタクチビルケイソウは「河川付着珪藻(けいそう)」。細胞の長さが0・2ミリと珪藻としては大型で、厚さ数センチの分厚い群体が河川の石を覆う。
関東や九州の河川中上流域の一部では河床全面を覆うように大繁殖した。アユが著しく減少したとの報告があるほか、藻類を食べる水生昆虫がいなくなるとも言われ、生態系への大きな脅威になる可能性がある。
安曇川では昨年5月、ミズワタクチビルケイソウの群体が2~4センチ程度のこぶ状に盛り上がっていた。水深20センチ付近までの浅いところで最も多く見られたという。昨年6月以降は水温上昇とともに衰退したものの、県水産試験場は「他県の事例から考えると、2月から再び増殖する恐れがある」と懸念している。
1月23日に現地調査した琵琶湖博物館の大塚氏は「ミズワタ状の繁茂は見られなかったが、石の付着物を顕微鏡で観察すると、ミズワタクチビルケイソウが結構張り付いていた。今後とも警戒が必要だ」としている。
ケイソウは釣り具や網、長靴、川遊びのサンダルなどに付着して遠方に運ばれ、繁殖域を拡大するとされる。道具などからケイソウを取り除くには、濃度5%以上の食塩水に1分以上ひたす▽温度60度以上の湯に1分以上ひたす▽消毒用アルコールを吹きかける――の三つが有効だという。【庭田学】