環境省奄美野生生物保護センターが主催する2025年度あまみワイルドライフセミナーが7日、鹿児島県大和村の同センターであった。九州大学比較社会文化研究院の荒谷邦雄教授が「奄美大島の貴重な昆虫相」の演題で講演。約40人の参加者は、昆虫の基本的な特徴について理解を深めたほか、奄美群島に多様な昆虫が生息する理由やその特徴、直面する危機などを学び、保全意識を高めた。
セミナーは、同センターが開所した2000年から講演会形式で調査や研究成果の地域還元、自然環境保全の普及啓発を目的に行う。奄美群島の動植物を中心に幅広いテーマで各専門家が登壇している。
講演前半、荒谷教授は昆虫の基本的な特徴について、全動物100万種のうち昆虫が75万種を占めることや、昆虫の歩行のメカニズムは常に3本の脚で三角形の重心を保ちながら歩くことなどを解説。多くの昆虫は耳が脚の付け根にあること、呼吸器官である気門が腹部にあることなど、人間とは大きく異なる身体構造も示した。
後半は奄美群島のクワガタムシについて、日本のクワガタおよそ45種のうち11種(25%)が生息していることを紹介し、島ごとに独自の亜種に分化している例を説明した。
奄美群島に多様な昆虫が生息する理由として、荒谷教授は①熱帯と温帯の要素が混じり合った地域②照葉樹林が発達している③島ごとに独自の生物相が形成されている―ことの3要素を挙げた。
荒谷教授は昆虫相が直面している危機にも言及。外国産のクワガタやカブトムシが野外で発見される事例が全国で増加していることを示し、外来種の幼虫が在来種を捕食する問題や病気・寄生虫の媒介、交雑による遺伝的汚染の危険性を指摘した。
「奄美群島では隣接する島同士でも異なる亜種に分化しているため、隣の島の個体を持ち込むことも外来種問題となる」と荒谷教授。旅行先などで採集した昆虫を別の地域で放すことの危険性を強調し、飼育している外来種は元いた場所に放すか、最終的に標本として保存することを推奨。意図しない逃亡を防ぐための適切な飼育管理の重要性も伝えた。
