古文書かじる外来害虫、19都道府県に拡大…繁殖力高く1匹が3年後には約2万匹に

 古文書などの紙を食べる「文化財害虫」のニュウハクシミが、博物館や図書館など19都道府県に拡大している。繁殖力が強く、定着してしまうと駆除が困難になる。害虫の防除方法の調査研究を行う東京文化財研究所は、早期の発見と対応を呼びかけている。

 ニュウハクシミは、1910年にスリランカで発見された外来種の昆虫で、成虫は約1センチになる。紙の表面をかじり取るように食べ、古文書や屏風(びょうぶ)、掛け軸など史料や美術品を傷つける。

 ヒアリは中国や米国、台湾、オーストラリアなど環太平洋諸国・地域に広く分布している。日本では繁殖を繰り返して自然に増える「定着」に至っていないが、同省によると、今年度の発見事例は10月末時点で9都府県36件に上り、過去最多だった2017年度の26件を上回った。

 日本では2022年に、東京都や北海道、福岡県など5都道県の博物館や美術館、古文書館、図書館で初めて確認された。

 生態が分かっていなかったため、同研究所が調査したところ、交尾せずにメスが産卵する「単為生殖」であることがわかった。単独で子どもを作れるので、1匹残らず駆除しなければ増え続ける。1匹が3年後には約2万匹になるといい、交尾で増殖する従来のシミ科の昆虫に比べ、繁殖力は格段に強い。

 10度以下または湿度43%以下で死滅することも確認できた。しかし、文化財や書籍を保護するため適度な温湿度に保たれている博物館や図書館などは、ニュウハクシミが生息しやすい。

 ニュウハクシミが確認された博物館などの分布地域は広がっていて、同研究所によると、今年9月末現在で19都道府県にまで拡大している。資料や梱包(こんぽう)資材などに付着して移動したと考えられる。

 文化財の被害はまだ報告されていないが、同研究所は対策を呼びかけている。具体的には▽繁殖が起きやすい段ボールではなく、スチール製やプラスチック製ケースでの資料の保管▽壁際への殺虫剤散布▽こまめな清掃▽毒餌の設置――を挙げている。

 同研究所は今月4日から、ニュウハクシミが確認された博物館などに対し、防除用の毒餌キットの配布を始めた。同研究所の佐藤嘉則・生物科学研究室長は「ニュウハクシミは定着してしまうと駆除が極めて困難になる。全国に広まったり、定着したりしないうちに食い止めたい」と話している。

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