2006年12月18日

赤潮:琵琶湖の富栄養化、発生に関与か ケイ素奪い、瀬戸内海に影響/滋賀

 ◇有害な渦べん毛藻増え生態系変える\n ◇原島・国立環境研室長ら、仮説裏付けへ検証−−琵琶湖・淀川・瀬戸内海で
 70年代をピークとしていた瀬戸内海の赤潮発生に、当時の琵琶湖の富栄養化も関与していた可能性が、国立環境研究所(茨城県つくば市)の原島省・海洋環境研究室長らの研究で浮かび上がった。海の生態系で重要な役割を果たすケイ素が、琵琶湖の淡水性けい藻に相当量吸収されるため、河川を通って大阪湾に流入するケイ素の量が減少。その結果、瀬戸内海でけい藻の代わりに有害な渦べん毛藻類による赤潮が発生しやすくなったとみられる。【服部正法】

 ケイ素は自然風化により、陸から河川を通って海に流入。一定量のケイ素、リン、窒素を必要とするけい藻には欠かせない物質になっている。ダム建設などで流れが滞る水域が出来たり、窒素やリンが増える富栄養化が進むと、淡水性のけい藻が増加して、溶存態ケイ素を吸収して沈んで堆積(たいせき)。海に到達するケイ素が減ることで、海ではけい藻とは別の藻類が増え、生態系が変わるという「シリカ(ケイ酸)欠損仮説」が近年世界的に注目されている。原島室長らは琵琶湖―淀川―瀬戸内海のエリアで、仮説が裏付けられるか検証した。
 その結果、琵琶湖に流入する河川では1リットルにつき200マイクロモル程度だったケイ素は流出時には約40マイクロモルにまで減少することが判明。けい藻に吸収されて流入ケイ素の8割程度が湖内で蓄積されることが推測された。淀川から海に流れ込むケイ素は大阪湾でけい藻の増殖に使われ、さらにケイ素の濃度が低くなった播磨灘などの瀬戸内海では、窒素やリンを必要とするがケイ素は要らない渦べん毛藻類が増殖することが考えられるとした。瀬戸内海では70年代には年間300回近く赤潮が発生し、養殖漁業などへの甚大な被害が問題化した。90年代以降は年間100回程度の発生。
 原島室長らの研究はスウェーデン王立科学アカデミーの環境科学専門誌に掲載。ダム増加と富栄養化が結びつき、海洋生態系に影響を与える可能性についてのアジアからの例示として注目されているという。 12月18日朝刊

+Yahoo!ニュース-滋賀-毎日新聞

Posted by jun at 2006年12月18日 17:08 in 自然環境関連

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