2006年08月21日

来季FLWツアーのペイアウト、ルール変更についての詳細

flwoutdoorslogo.jpg 8月10日、FLW Outdoors.comにてFLW Outdoorsのチェアマンであるアーウィン・ジェイコブスのオープンレターが公表された。内容は来季Wal-Mart FLWツアーにおけるペイアウトの変更である。FLWは7月に開催されたICASTにて来季ペイアウトについて語り、オープン戦(Wal-Mart Openなど)では100位まで1万ドルの賞金を授与すると公言した。しかし、今回、ジェイコブスが掲載したオープンレターで賞金配分の変更を述べている。「選手の声を反映させた」と括るその賞金配分は下位入賞者を考慮しながらも、上位入賞者が多くを受け取れるものとなった。そして8月17日、今度はFLW Outdoors CEOのチャリー・エバンスから大きなルール変更が提示された。それはいわゆる「ノーインフォメーションルール」で、公的な情報源以外からある一定期間はトーナメントに関する情報を得てはならないというものだ。

 まず最初に、Wal-Mart FLWツアーにおける“オープントーナメント”と呼ばれる類について記したい。FLWのオープン戦はオープンとはいえど、WON Bass U.S. OPENのように団体のメンバーでなくても「誰でも出場できる大会」ではない。あくまでもFLW系スポンサーに対してオープンの意味が強い。FLWツアーには冠スポンサーとしてWal-Martがついているが、あるスポンサーが「この大会を大きくサポートしたい」と申し出れば、彼のブランドネームを大会名称につけて開催できる(もちろんスポンサーはそれなりの賞金を提供しなければならない)。来季は第3戦がNational Guard Open、第4戦がWal-Mart Open、第6戦がChevy Openとして開催される。ちなみに、オープン戦がシーズン中に3大会以上開催されるのはFLWツアー史上初。
 今シーズン、FLWツアーのエントリーフィーはレギュラー大会が一戦あたり2750ドル、オープンが3000ドルだったのに対し、来季は3500ドルと4000ドルに増額となる。
 増額に関しては賛否両論を呼んだ。今シーズン開幕したBASSのEliteシリーズのエントリーフィーは5000ドルで、全11戦開催される。しかも必要経費もかかるわけで、あまりにも高額なために多数のアングラーが出場を断念した。FLWツアーの場合、エントリーフィーの総額は2万4000ドルとやや良心的だが、それでも増額に不満を漏らす選手は後を絶たなかった。
 そこでFLW Outdoorsはオープン戦の賞金配分を発表し、下位にまで充分な賞金が行き渡るペイアウト率を唱えた。
 では、そのペイアウト率を見てみよう。


=今季までのFLWツアー・オープン戦のペイアウト=

1位:20万ドル 
2位:10万ドル 
3位:5万ドル 
4位:4万ドル 
5位:3万ドル 
6位:2万8000ドル 
7位:2万6000ドル 
8位:2万4000ドル 
9位:2万2000ドル 
10位:2万ドル 
11-15位:1万3000ドル 
16-20位:1万2000ドル 
21-25位:1万1500ドル 
26-30位:1万1000ドル 
31-40位:1万500ドル 
41-50位:1万ドル 
51-60位:5000ドル 
61-75位:3000ドル 

=FLW OutdoorsがICASTで発表した来季FLWツアー・オープン戦のペイアウト=

1位:15万ドル 
2位:5万ドル 
3位:3万ドル 
4位:2万5000ドル 
5位:1万8000ドル 
6位:1万6000ドル 
7位:1万4500ドル 
8位:1万3500ドル 
9位:1万3000ドル 
10位:1万2500ドル 
11-15位:1万2000ドル 
16-20位:1万1500ドル 
21-25位:1万1000ドル 
26-30位:1万500ドル 
31-100位:1万ドル 

 今シーズンまでの賞金配分と来季の配分で一目瞭然なのは、優勝賞金が5万ドル低額になっただけでなく、上位入賞者の賞金全体が低額になったこと。その一方で、31-100位までが1万ドルを授与するといったものだった。
 
 「私は最近、来季FLWツアーのペイアウトに関して、ツアー参戦選手たちからEメールや電話をもらった」ではじまるアーウィン・ジェイコブスのオープンレターにおいて、氏はペイアウトの見直しを記載している。
 「(オープン戦において)100位で1万ドルの賞金が授与されれば、エントリーフィーはおろか、他の大会で出た損失やトレイルの必要経費が下位選手まで行き渡る。出場者数の50%の戦績を収めれば、1万ドルの賞金が授与される。これは魅力的なことだと思っていたが、多数の選手がこの配分はバランスが取れていないと唱えた。下位の待遇がよく、上位入賞者には充分に配分されていない、と。我々もその意見を真摯に受け止め、来季ツアーのペイアウトを見直した」と記した。その結果、下記が変更後に発表されたオープン戦のペイアウトである。


=変更後の2007年FLWツアー・ペイアウト=
1位:15万ドル 
2位:7万5000ドル 
3位:5万ドル 
4位:4万5000ドル 
5位:3万8000ドル 
6位:2万9000ドル 
7位:2万8000ドル 
8位:2万7000ドル 
9位:2万6000ドル 
10位:2万5000ドル 
11-15位:1万5000ドル 
16-20位:1万4000ドル 
21-25位:1万3000ドル 
26-30位:1万2000ドル 
31-40位:1万1000ドル 
41-60位:1万ドル 
61-75位:7000ドル 
76-100位:4000ドル 

 優勝賞金こそ変更にならなかったものの、上位入賞者の賞金にはかなり華やかになった。たとえば、2位に関して言えば、2万5000ドルのアップである。100位で4000ドルということは、少なくともエントリーフィーは戻ってくる。経費を加算して+-ゼロに持ち込みたいなら、75位には入賞したいところだ。


 次に、来季FLWツアーのレギュレーション変更事項について触れておきたい。チャーリー・エバンス(FLW CEO)のオープンレターで、「選手は、トーナメントへのエントリー(またエントリーフィーの支払い期限)以降、そしてトーナメント期間中に、公的に入手できる情報を除き、選手以外の人物から釣りに関するインフォーメーションを受けたり、懇願することはできない」と発表した。
 現在のところ、エントリー期限は発表されていないが、今シーズンまでは本戦初日から2週間前までが期限だった。来季も今シーズンと同様の場合、本戦の2週間前からこの「ノーインフォーメーションルール」が適応される。

 またエバンスは「トーナメント開催週の水曜日正午からオフリミットとする」と加えて発表した。
 これまでにFLWツアーはオフリミットを設定したことはない(FLWシリーズは12日間のオフリミットを採用。BASS Eliteシリーズでは30日間のオフリミットを採用している)。

 一部の報道によると、某アングラーが収集した調査結果によって今回のレギュレーションの変更が行なわれたと記されている。彼は今季FLWツアー最終戦にて独自に調査を行ない、ノーインフォーメーションルールの必要性を聞いた。その結果、調査に協力した3/4がこの新ルール導入に賛同したという。

 そもそもトーナメントシーンでは様々な情報収集方法によって、選手がエリア、パターンの決定をしてきた例がある。ローカルアングラーからエリアを教わったり、ガイドサービスを雇ってレイクをガイドさせたり、プロダクティブなエリアやハンプ、沈み物がマークされたGPSを借りたりと、例を挙げればキリがない。これに異を唱えたのがリック・クランをはじめとする「スポーツマン精神」を尊重するアングラーたちだった。彼らはこれらの手法を禁止するためBASSに訴え、団体は2004年から旧バスマスターツアーでノーインフォーメーションルールを採用した(採用された当時、ツアーには採用されたがオープン戦には採用されなかったため、その不公平さを唱えたアングラーもいた)。今回のFLWツアーにおけるルール変更は、バスフィッシングが個人競技としてのレベルの高さを追求する結果だと思われる。
 しかし、このルール導入に反対する選手も少なくない。バスフィッシングはNASCARのようなカーレース(モータースポーツ)と比較されるケースが多い。サーキットをトレイルし、クルマ(orボート)やウェアにはスポンサーのロゴが並ぶ。また一戦一戦を通して年間ポイントを獲得するほか、チャンピオンシップも開催される。ともにアメリカ南部を中心に人気の高いジャンルであるのも共通している。ところが、これら2つの決定的な違いは、NASCARはドライバーがいるもののチームが一丸となって戦う団体戦、バストーナメントは個人競技であることだ。新ルール導入に反対するアングラーは、勝利をもぎ取るために、我々もチームを組んで戦略を練っている。出場するのはひとりだけど、戦略を考えるのはチームの仕事、と考えているからだ。たとえば、ガイドを雇って同船させ、いいエリアを見て廻る。また、5人のローカルエキスパートを雇い各アングラーが各ボートでレイクをチェックして廻れば、実力に差はあれど、5倍のプラクティスが可能になる。チームワーク(チームで行なった仕事)と考えれば、バストーナメントにおけるチーム戦術も存在するのだ。


 FLW Outdoorsがアングラーたちに受け入れられている背景には、ペイアウトにしろ、新ルールにしろ、FLWシリーズのような新カテゴリー/トレイル開設にしろ、選手の意見を取り込んでくれることだろう。数年前から選手がユニオンを組んでPAAたる組織が運営されているが、FLWは彼らの意見を入り入れる一方、BASSは彼らの存在すら無視した見解も見せている。 
 レンジャーボートのファウンダーのフォレスト L. ウッドはThe Outdoor Wireの8月17日付けのインタビューで「どんなビジネスでも競争相手がいた方がいい」と語りながらも、「FLWはBASSとは進んでいる方法が異なる。それはいいことだ」と答えたのが印象的だ。
 つい先日、BASSからジェネラル・マネージャーのドン・ラッカスが退任したと発表された。フェデレーションの分散(フェデレーションを組織するThe Bass Federation Inc.がFLW Outdoorsに移籍) し、今シーズン開幕となったサザンおよびノーザンツアーは上手く軌道に乗れていない。エントリーが全戦分支払えず、途中でEliteシリーズから脱落したアングラーも数名いる。そんな状況で迎える2007年シーズン、FLWとBASSの方向性からますます目が離せない。

+FLW Outdoors

Posted by DODGE at 2006年08月21日 16:23 in 海外トーナメント:FLW

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