2006年08月21日

<亜熱帯化>日本列島で現実味 各地で南方原産の生き物

 「日本列島の亜熱帯化」が現実味を帯びてきた。強烈な集中豪雨が夏場に頻発し、南方原産の生き物が各地で見られる。地球温暖化の影響を指摘する専門家も多い。日本の自然に何が起きているのだろう。【野島康祐】

◆南方の昆虫が関東に
 ケヤキやイチョウなどの葉が茂る東京・上野公園。ここ数年、「ジャー、ジャー、ジャー」というクマゼミの声がよく聞こえるようになった。
 東京医科歯科大の藤田紘一郎名誉教授(熱帯医学)は「クマゼミなどの南方原産の虫が関東各地でも暮らせるようになっている」と指摘する。東京都八王子市の高尾山(標高599メートル)では3年ほど前から毎年、アジアやアフリカの熱帯、亜熱帯地域に広く分布する「ツマグロヒョウモン」というチョウが見られるようになった。
 藤田教授が「驚いた」と話すのは昨年末の出来事だ。千葉県船橋市にあるマンション4階のベランダで採取された1匹の蚊の標本が届いた。藤田さんが調べると、雌のイエカで、産卵のため吸血していた。「蚊は9、10月には寒くて死ぬ。昨年末は寒い日が続いたのに、関東で越冬しようとしていた」と藤田さん。
◆海でも    
 海中の異変は顕著だ。「本州では産卵しない」と言われていた熱帯魚のクマノミが伊豆半島で繁殖し、相模湾でゴマサバの漁獲量が増えるなど、本来なら南の海でしかすめない魚が関東周辺に北上していることがここ数年、確認されている。半面、海が低温でないと繁殖できないマイワシが日本近海で減り「高級魚」になったのも、海水温の上昇が一因といわれる。
 東京湾の生物調査を続けている東京都島しょ農林水産総合センターによると、東京湾では2年前から、ミドリイガイ(東南アジア原産)やチチュウカイミドリガニ(地中海原産)などの外来種が頻繁に見つかっている。
 04年11月には東京・お台場で、国内で初めて「上海ガニ」(チュウゴクモクズガニ)の成体2匹が発見された。こうした東京湾の外来種の「運び屋」は外洋船舶と見られる。船のバランスを取るために必要な水を南の海で積み、東京湾で放出。かつては生息できなかった生物が最近は生き延びているのだ。同センターの小泉正行主任は「東京湾は、世界中の海中生物が交流する。湾内の状況に適応し、生きながらえる種類が増えるかもしれない」と予測する。
◆集中豪雨の多発
 今年の梅雨末期、長野県や南九州が集中豪雨の大きな被害を受けた。集中豪雨の多発は、水蒸気量の増加とも関係がある。気象庁海洋気象情報室によると、日本近海の最近の海水温は20〜28度と、例年に比べ0.5〜3度高い。その分、海面から蒸発する水蒸気の量が増えているとみられる。
 ニュース情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」(TBS系)に出演する気象予報士、根本美緒さんは「東京・代官山ではハイビスカスが自生しています。水蒸気量が増え、今後、強力な台風が発生しやすくなるとも考えられる。日本は亜熱帯化しつつあるのでは」と心配する。
 一方、神奈川県立生命の星・地球博物館(小田原市)の瀬能宏主任研究員(魚類分類学)は、外来種の定着と地球温暖化の関係について「1、2年だけの調査ではなく、何十年か調査を続けないと大きな状況は分からない」と慎重だ。
(毎日新聞)

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Posted by DODGE at 2006年08月21日 15:05 in 魚&水棲生物, 自然環境関連, 内水面行政関連

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