2006年06月16日

争点の現場から:2006知事選/5止 琵琶湖レジャー規制 /滋賀

 ◆「知事選、きょう告示」
 ◇環境と調和、課題山積
 ◇「ルール浸透」も違反といたちごっこ
 数々の固有種を有する生物多様性の宝庫で、近畿地方の飲料水の供給源でもある琵琶湖。さまざまな顔を持つこの湖は、水上バイクなどレジャーで利用する人々にとっても、波がなく広々とした絶好の環境だ。県自然環境保全課嘱託職員の極本広行さん(65)はそんな琵琶湖のレジャー利用状況を、休日のたびに監視している。「監視船がいる時はルールを守っても、我々が去ると好き放題やる利用者もいる。それでも地道に監視を続けて『うるさいな』と思わせるだけで、効果はあると思っています」

 90年代以降、水上バイクなどのプレジャーボートの危険運転がたびたび問題になり、騒音やバーベキューの後始末の悪さなど、一部利用者のマナーも問題視されるようになった。2期目の国松善次知事(68)は03年、琵琶湖レジャー利用適正化条例を制定。指定された航行規制水域内で、発着時の徐行以外に自由な運転を禁止する「琵琶湖ルール」を定めた。取り締まりに当たる中で、極本さんは「ルールはそれなりに浸透している」との感触を得ている。
 しかし、ルールは周知されても十分に守られていないのが現状。本格的なシーズン前で天気も悪く、利用者が少なかったこの日も、近江舞子(大津市)沖で、禁止されている航行規制水域の横切りに対し、県は2件の警告を出した。プレジャーボートの利用者は湖岸の「観衆」や遊泳客がいる場所での操縦を好むことが多く、規制水域が侵されやすい。お盆前後の最盛期には、取り締まっても収拾がつかない状態になることさえあるという。国松県政は取り締まり強化の方針を打ち出し、先月には県プレジャーボート対策協議会を設置して県警との連携を確認。摘発も辞さない姿勢だ。
 一方、環境負荷が大きいとされる2サイクルエンジンについて、県は一度は08年までの規制を打ち出しながら、条件付きで11年まで移行期間を延長した。「規定には事実上罰則がないため、2サイクル以外への移行が進んでいない現状では、マリーナと連携し、長い移行期間の中で指導していくほうが実効性が高い」との狙いだ。
 知事選に立候補を予定する辻義則氏(59)はその県の姿勢を批判。「2サイクルエンジンの早期規制に取り組む」ことを公約に挙げる。同じく立候補を表明した嘉田由紀子氏(56)も公約で「プレジャーボートの発着はマリーナに限定。罰則を含めた規制を設け、琵琶湖レジャー利用税を創設する」としている。
 県や嘉田氏は「マリーナとの連携」を挙げるが、そこにも課題はある。現在、県のマリーナ指導要綱に従い、正式にマリーナとして認定されているのはわずか6業者。桟(さん)橋や湖岸までのプレジャーボートの搬送路などの形で許可を受け、事実上マリーナとして営業している適法業者も約20しかない。残る40以上の業者が琵琶湖の不法占用の状態。中には湖岸を勝手に埋め立て、湖の形を変えてしまう悪質な業者もいるといい、まずは指導の徹底が必要なのが現状だ。
 県琵琶湖不法占用対策室の担当職員は「確かに湖岸のどこからでもプレジャーボートの利用ができる状況は好ましくないが、受け皿となるマリーナが現状では不十分。だからと言って適法業者を増やそうと認定基準を下げると、琵琶湖中が桟橋だらけになってしまう」と話す。
 「全体の調和が重要。琵琶湖の環境や住民の生活とのバランスを考え、ルールの中で楽しく遊んでもらうのがわれわれの願い。何も全面排除すると言っているわけではないんだから」と極本さん。さまざまな立場の人たちが「マザーレーク」をうまく共有すること。そのための課題に、まだ解決の道筋はついていない。【高橋隆輔】
  ◇  ◇
 任期満了に伴う知事選が15日、告示される。滋賀の未来像などを巡り、候補者が公約や政見を有権者に訴える。投開票は7月2日。(おわり)

6月15日朝刊
(毎日新聞)

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Posted by DODGE at 2006年06月16日 11:30 in ブラックバス問題

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