2006年04月24日

帰ってきたニゴロブナ 琵琶湖からのメッセージ

 ニゴロブナ漁が最盛期を迎えた今月7日。高島市沖約3キロ、水深75メートルの琵琶湖に仕掛けた刺し網(長さ約800メートル)を引き揚げると、腹に卵がぎっしり詰まったニゴロブナが次々と姿を見せた。

 琵琶湖の固有種であるニゴロブナは、ふなずしの材料として漁業者に重宝がられている。商品価値が高いのは卵をいっぱいはらんだ雌で、卵が少ないと「雄」として扱われる。網に絡まった雌を丁寧に外していく八木勝さん(76)=高島市安曇川町=は「これがあるからおまんまが食べられる」と、にんまりした。
 少し沖の水深87メートルで漁獲が少なく、フナが湖岸に近づいている気配を感じた矢先だった。2カ所で雌が計14キロ、約70匹。丸々と太った体からは黄色い卵が垂れていた。「4、5年前ならこんなに捕れることはなかった。最悪の状態は脱したかな」。長男の勝次さん(56)は、手応えを感じているようだった。
 資源回復の兆しは、県水産試験場(彦根市)の調査結果にも現れている。
 同試験場はニゴロブナの稚魚放流を始めた1994年度から毎冬、北湖でその年の春に生まれた当歳魚の資源量を推定するための捕獲調査を続けている。標識を付けた放流魚と天然魚を合わせた資源量は、2002年度から200万匹を超えている。04年度には最多の360万匹に達し、放流魚は全体の4割を占めた。根本守仁主査は「天然資源の減少に下げ止まり感が出てきた。不安定な天然魚に放流魚が上乗せされ、一定量を確保できるようになった」と、放流の効果を認める。
 ニゴロブナを含むフナの漁獲量は03年が97トンと、最近は100トン前後の年が続く。40年前のほぼ10分の1だ。主に産卵場所の減少や外来魚の繁殖による影響が大きいとされ、同試験場は「放流によって現状を維持している状況」という。
 根本主査は「放流がいかに天然魚の再生産につながっていくかが重要。ヨシ帯や田んぼで生まれ育つフナは、湖岸域の環境の変化を探る上でも重要な指標となる」と話す。今後、年ごとの天然魚の数のばらつきの原因を探るため、過去のデータの解析にも乗り出す。
 漁業者も、資源回復の努力を重ねている。県と刺し網漁の漁師たちは現在、自主規制で全長18センチと定めている漁獲サイズを、10月からさらに引き上げる「ニゴロブナ資源回復計画」の検討を進めている。成長の遅い雌に1年でも多く産卵期を迎えさせ、資源量の拡大につなげる考えだ。
 勝次さんは「来年も捕れるかどうかは、何とも言えない。回復の兆しを軌道に乗せるには、もう少し我慢が必要。琵琶湖の魚をこれ以上失うわけにはいかない」と、規制の見直しを歓迎する。
 港に帰る船で、漁師歴60年になる勝さんはしみじみと語った。「漁師を始めたころは、いつもこれぐらいはおった。あらゆる魚がおもろいほど捕れた」。そんな琵琶湖を取り戻すため、漁業者らの模索は続く。
 (滋賀本社 広中孝至)
(京都新聞)

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Posted by jun at 2006年04月24日 12:29 in 自然環境関連

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