昨年末、O.S.P.は並木敏成さんが参戦したWal-Mart FLW Tour2005のトレイル風景をドキュメンタリータッチで追いかける「Bassin' Road 2 Part1 THE WINNING」DVDをリリースしたが、今作品はその続編である。「THE DEADHEAT」にはパート1では収録しきれなかった第5戦ウィーラー・レイク大会、第6戦ポトマック・リバー大会、Forrest L. Wood チャンピオンシップ、そしてCabela's TOP GUNチャンピオンシップの全4戦分を収録。本編はなんと約2時間。ボーナス映像も含めると、約2時間30分の大作だ。シーズンエンドに近づき、AOY争奪合戦をグレッグ・ハックニーと交えるシーン、最後の最後まで諦めず釣り続ける精神性などが伝わり、まさにデッドヒートな一作に仕上がっている。
それを象徴するのが、FLW Tour第6戦分のショットだ。最終戦に向けて年間総合4位で臨んだ並木敏成さんは、首位のJTケニーと23ポイント差、2位のアンソニー・ガグリアーディと21ポイント差、3位のグレッグ・ハックニーとは7ポイント差だった。今大会の開催地はケニーのお膝元。彼がAOY を獲得するのはもちろん、この一戦でのグッドパフォーマンスも大きく期待されていた。
ところが初日、JTケニーは70位でスタートする。「2日めに巻き返したとしてもAOYレースからは脱落した」と誰もが感じた。アンソニー・ガグリアーディも37位で予選敗退する。決勝に進出したのは、並木さんとグレッグ・ハックニーの2人。AOYレースは、この2人のウエイトに託された。
初日の朝、並木さんは「まぁやるだけだね」と述べている。特にAOY奪取を気にしているわけでもなく、まずこの大会で好成績を残せば、AOYも自ずと降りてくる、といったような雰囲気を示唆させる。しかし、どうだろう。年間成績のトップ4が1位を獲得するチャンスを残した大会だ。並木さんも深江真一さんに続き、AOY奪冠を夢に見ていないとは思えない。そういった周囲からの期待を遮断し、並木さんは平然と「やるだけ」と語る。初日を13位で折り返したときに、「決勝に残るだけ。やるだけ」と今戦を優勝することで、最終的な有終の美を飾ろうとしている言動にプロ意識を感じる。
予選最終日のステージでも、並木さんは気になるコメントを残している。「私はグレッグにAOYを取ってもらいたい。彼は昨年年間2位で終わったし、それに彼は素晴らしい人間でもある。私はただの釣り人だからね」と謙遜するが、これも並木敏成一流のプレッシャーのはね除け方なのだろう。
一方で、決勝に入ると、並木さんとハックニーの顔には、今までの余裕は現れない。コメントする声も震えれば、ナミキスマイルも飛び出さず、慎重に言葉を選んで話している。AOYへの望みが消えた瞬間の並木さんの表情、AOY奪冠を待つハックニーの仕草、そして決定瞬間の両者の表情は、バスフィッシングというスポーツが演出する最高の場面を作り出している。
釣りを知らない人が鑑賞すれば、何が起こっているのかわからないシーンが多いかもしれないが、一ドキュメンタリー作品として、そんな感動的なカットを見れば、いかにこのジャンルが人間ドラマを生んでいるのか理解できるはず。そういった意味でも、「THE DEADHEAT」は必視のDVDである。
発売元:O.S.P. Inc. 価格:3990円(税込み)
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