2005年10月06日

利根川:天然アユの姿を再び 利根大堰取水ゲート、あすから流速調整実験 /群馬

 ◇「戻す会」の訴えに応え−−水資源機構
 利根川に天然アユを取り戻すため、利根大堰(おおぜき)(千代田町)の流速を変えようと6日、取水ゲートの開門調整実験が始まる。県内の釣り人らでつくる「日本一のアユを取り戻す会」(大塚克巳会長)の訴えに、大堰を管理する独立行政法人水資源機構(さいたま市)が応えた形。大堰が利水目的以外で取水ゲートの開閉を調整するのは68年の完成以来初めて。取り戻す会の堂前明広副会長は「川や山で遊んだ子どものころの利根川を次世代に取り戻したい。ゲート調整はわずかな一歩だが、変化が起きてうれしい」と話している。

 会は02年設立。利根川の環境を考えようとアユ釣り大会やシンポジウムを開いてきた。埼玉県水産試験場の調査で利根大堰から導水路に誤流入する稚魚が年間6億〜94億匹と分かり、改善を求めようと昨年8〜11月、計2万4868人の署名を集めた。
 会によると、アユは川で孵(ふ)化(か)して海へ下り、成長後に再び川を遡上(そじょう)する。利根大堰には魚の通り道として魚道3本が設置されているが、孵化したばかりで泳ぐ力の弱い稚魚は流れに乗って川を下るため、流れの早い利根川右岸に集中し、右岸に設置された農業用水取水ゲートに吸い込まれてしまうという。堂前副会長は「導水路に誤流入したアユは利根川に戻ることはできない。利根川上流へ戻るアユは放流された稚魚のわずか1%」と話す。県によると、80年に669トンあった利根川のアユ漁獲量は、03年には20分の1以下の32トンに減少した。
 会は9月28日、集まった署名を添えて▽水流の緩やかな利根川中央部のゲートから取水する▽オイルフェンスのような防護物で稚魚を守る▽稚魚が川を下る一時期のみ取水量を少なくする――など、いくつかのアイデアを国土交通相へ提出。国交省職員と水資源機構を交えた話し合いで「取水量の変更やゲート改修は難しいが、流速の調節など現行施設の運用で可能なことは試す価値がある」とまとまったという。稚魚が川を下るのは10月中旬〜12月上旬の短期間。ゲートの開閉で流速が変化するか、稚魚の誤流入が防げるかを実際に確認することになった。
 6日午前10時半からのゲート調整には取り戻す会メンバーも立ち会う。堂前副会長は「大堰が作られた当時はまず利水ありきで、生態系や環境を考える時代ではなかった。自然と共存できる社会を目指し変えていければ」と話した。【藤田祐子】

10月5日朝刊
(毎日新聞)

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Posted by DODGE at 2005年10月06日 12:50 in 魚&水棲生物

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