2005年03月14日

日釣振長野県支部が「釣りと環境を考える集いin信州」を開催

 
 3月13日、長野県の下諏訪総合文化センターにおいて(財)日本釣振興会長野県支部の主催によるシンポジウム「釣りと環境を考える集いin信州」が開催された。シンポジウムでは水産庁資源管理部沿岸沖合課の釣人専門官である桜井政和さん、そして筑波大学大学院人間総合科学研究科・助手獣医師の升秀夫さんがそれぞれ講演を行なった。

 昨年10月に水産庁資源管理部沿岸沖合課に新説された釣人専門官に任命された桜井さんは「釣りをめぐる情勢と釣人の対応方向」と題した講演を行なった。釣人専門官とは「釣りその他の方法により遊漁をする者に関する専門の事項についての企画及び連絡調整に関する事務を行う」もので、今回の講演も行政と釣り人との橋渡しの一環として行なわれたもの。
 桜井さんはそもそも釣りが公共水面における無主者の採捕という点で「自由な遊び」でありながら、現実的には水産業促進を目的として種苗放流されたマダイやヒラメなどを採捕してしまう点などにおいて漁業、水産業とも密接な関わりをもっていると指摘。内水面漁業権の対象となっている魚を釣る際には漁業法に基づいた遊漁料などが必要なほか、海釣りに関しては「協力金」という形で任意にお金を集め、それを種苗放流事業費に充てる試みが行なわれている。つまり、釣りはマナーやモラルだけでなく、一定のルールに基づいて行なわなくてはならないと指摘。レジャーである釣りも社会の動向と無関係ではないことから、釣り人が主体的に現場レベルで議論や行動を起こし環境や資源への貢献を示すことが必要だと述べた。
 「外来生物被害防止法」に関しては、中央環境審議会野生生物部会の外来生物対策小委員会の委員長談話について触れた。「外来生物問題に関する総合的な取組について」として発表されたこの委員長談話には、この法律が国内移植種に対応していない点が指摘され、国内で人為的に移動される在来生物への対応が必要であると記されていると紹介。一方、内水面の漁業はアユ、ワカサギ、サケ・マス類、フナ類など、その多くが種苗放流に依存しているとともに、釣りと大きく関連していることを紹介した。
 升さんは「釣人の公衆衛生」と題した講演を行なった。私たち人間をはじめとした我が国のほとんどの動植物は大陸から持ち込まれたものと指摘。棚田に代表される水稲を利用した稲作文化はそもそも大陸から持ち込まれたものであり、スダジイなどの照葉樹を落葉する広葉樹に植え変え、これによって得られる富栄養水が水田に利用されてきた歴史を紹介した。つまり、「里山」と称される我が国の自然形態も、そもそも人為的に作られたものだという。この里山の自然が山と川との繋がりを生んだことによって魚たちが水田や水路を繁殖場所として利用し、その繁栄を促したことも紹介。このような歴史を踏まえたうえで、ブラックバス問題でいわれる『外来』と『日本固有』の定義を一人一人が考える必要があると述べた。
 いっぽう、現在の我が国では都市型生活の価値観が上昇したとともに、農業の効率化増進によって農薬が使用されるとともに水路が護岸されてしまった。これによって、里山の自然を利用してきた魚たちの生息環境が急激に悪化したことを指摘。農薬の使用をやめ、棚田の時代の生活に逆戻りするということは現実的には難しいことから、現状において環境改善のためになにができるかを水辺で遊ぶ釣り人たちも真剣に考えるべきだと語った。
 また、獣医師という立場から「ブラックバスの公衆衛生貢献」を提案。「バスは近代国家の日本に必要不可欠」としたうえで厚生労働省がキンメやマグロの水銀汚染を妊婦に警告しているように、バスを淡水域の重金属や化学物質汚染の生物指標として利用できる可能性を指摘。また、命の大切さを学ぶ教材として犯罪防止に利用したり、バスフィッシングによるQOL(Quality Of Life)の向上によって精神衛生に役立つということも紹介した。

 
 
 

Posted by jun at 2005年03月14日 14:20 in 各種イベント

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