東京都・小笠原諸島の西島という小さな無人島で、外来種であるクマネズミの根絶に成功した。
独立行政法人森林総合研究所(茨城県つくば市)と財団法人自然環境研究センター(東京都台東区)らが、東京都内で9月15日に開かれた日本哺乳類学会で発表した。0.5平方キロメートルの小さな島とはいえ、外来種を根絶することができたというのは画期的なことだ。
クマネズミは、かつて人間によって小笠原諸島の島々に持ち込まれて増殖し、現在では貴重な動植物を絶滅の危機にさらしていると考えられている。たとえば、小笠原諸島の固有種であるアカガシラカラスバトの餌であるシマホルトノキやムニンシロダモ(いずれも固有種)の種子が食害されたという事例ある。
いったん定着した外来種を根絶するのは非常に大変で、ブラックバスやマングースの駆除には、毎年数億円もの費用がかけられている。また、アメリカザリガニやセイヨウタンポポのようにすっかり定着しているものも多い。
根絶がいかに大変であるかを体感するために庭で簡単な実験を行った。
よく見かける長さ60cmのプランターにルッコラという野菜が20株ほど植えてあり、そこには外来種であるモンシロチョウの幼虫(青虫)が多数いる。このプランターを使って、見つけられるだけの幼虫を捕獲したところ、31匹だった。
翌日も同じ方法で捕獲すると11匹に減った。さらに同じことを続けると次第に捕獲数は減少し、6日目には幼虫は見つからなくなった。それ以降、見つからなかったことから根絶に成功したと考えた。
捕獲した幼虫の数をグラフにすると、指数関数的に減少したことが分かるが、このことは一体何を意味するのだろうか。
駆除をする際、最初はたくさん捕まるが、その後は同じ労力をかけているのに捕獲数が減り、対費用効果が低下していくことを、この実験結果は示している。もしこれを行政が行ったらどうなるだろうか。
行政は対費用効果が少ないことには予算を割かないから、最初のうちは予算を付けるが、しばらくすると渋り始め、根絶が目の前に迫った頃には予算配分がなくなっているかもしれない。
しかし、外来種を根絶しようとする場合、対費用効果が低くなっても捕獲を続け、完全にいなくなるまでねばり強く継続することが重要だ。なぜなら、クマネズミなど多くの生物では、個体数が低くなると、逆に繁殖能力が高くなる性質があり(専門用語では「密度効果」という)、個体数が減ったと喜んで駆除の手を止めてしまうと、短時間で再び増加してしまう危険性が高いからだ。
根絶を効率的に行うには、生物の増加速度よりも圧倒的に早いスピードで集中的に駆除を行うことが有効で、環境省が指定している特定外来種などの種が新たに見つかった場合には、生息数や分布域が小さいうちに迅速に対応する初動体制の整備も必要だろう。
もっとも外来種の根絶が目的の場合と、農林水産被害などを軽減するために個体数を低いレベルに押さえていれば良い場合とでは、予算の使い方が違う。前者の場合は短期集中的に、後者の場合はどちらかというと長期的に配分するのが効果的だろう。
実際に予算配分を行うことになる行政関係者は、野生生物の管理目標を明確にし、適切な予算配分ができるように専門家に相談するなどの工夫が重要だ。
(記者:小川 寿林)
Posted by jun at 2007年09月25日 12:22 in 自然環境関連