◇水位を調整する瀬田川洗堰の操作に活用も
琵琶湖全域での在来魚種の産卵状況を調査・研究し、一般向けにデータを公開するユニークな取り組みが、4月から大津市黒津4の資料館「アクア琵琶」で始まっている。データは将来的には琵琶湖の水位を調節する「瀬田川洗堰」(大津市)の操作にも反映される可能性もあり、注目を集める取り組みとなりそうだ。【高橋隆輔】
データは、琵琶湖水系の水生生物の生態調査に当たる市民団体「琵琶湖博物館うおの会」が収集している。琵琶湖全域ともなると、リアルタイムの産卵データを収集し続けることは容易ではないが、同会は調査の経験も豊富で、学術論文の基礎データにも用いられるほど、調査の正確さへの信頼も高い。
アクア琵琶は親子連れや、子どもだけの来客も目立つ。データは設けられた専用スペースに地図と共に示され、日によっては産み付けられたばかりの卵を顕微鏡で観察できるなど、市民に在来魚種への親しみをもってもらえるよう工夫されている。
またこの市民発のデータの活用法は、啓発だけに留まらず、より大きな意義を持ちそうだ。
国土交通省近畿地方整備局琵琶湖河川事務所では、03年ごろから水位をうまく調節し、在来魚種の卵のふ化をなるべく妨ぐことがないようにする試みを行っている。
06年に湖岸3カ所でモニタリングしたところ、乾燥した卵は1・6%に留まるなど、着実な成果をあげている。
今年度からは3地点での産卵調査結果を堰の調査に反映。1日に10万個以上の産卵が確認されると、ふ化し、泳ぎまわれるようになるまでの時間を確保するために5日間水位を維持することを運用に盛り込んだ。この操作の参考には、今年度は業者の調査した数値が採用されている。しかし、同事務所は「当然、将来的には(市民のデータの)活用を考えている」と意欲的だ。
同会のデータは、会員が調査し、報告書を記入する方法で集められているため、データの把握に産卵からのタイムラグが生じることや、産卵の有無は把握できても、卵の個数までは調査項目に入っていないなどの課題がある。低コストで広範囲のデータが集まる利点もあるため、同事務所では今年度1年で集まったデータを見定め、活用法について検討を始める方針だ。
近年、ダムなどの土木構造物の作用をうまく使い、生態系を回復させようという取り組みは世界的に注目を集めている。琵琶湖は流出河川が瀬田川1本のみしかなく、そこに設けた瀬田川洗堰という構造物を利用した環境操作が、広範囲の生態系に影響するという特殊な環境。貴重な実践・研究となりそうなだけに、市民データの今後の状況にも目が離せない。 5月25日朝刊