2006年08月25日

「Hottest Rig Contest」 ストーリー オブ マイク・レイノルズ

reynoldsrig061.jpg 「私はアメリカ人であることを誇りに思う。究極の犠牲を払って私が自由に釣行できる環境を作ってくれた彼らに何かお返しがしたいと思った」と短い文言ながらもピュアな気持ちを吐露したのは、1965年生まれ、カリフォルニア州出身のBASS CITGOバスマスターEliteシリーズ参戦アングラー、マイク・レイノルズである。彼が言った「彼ら」とは、イラクやアフガニスタンで活動するミリタリー(米国軍)のことである。今シーズンから開幕したEliteシリーズでは、エンターテイメント性や選手個人のキャラクターを露出するために、ボートラップが義務づけられた。ベテラン選手がスポンサーに依頼してボートラップを完成させるのは簡単だが、中堅以下のアングラーがラップディールを獲得するのは容易ではない。ボートラップは1艇約4000ドルだと言われているだけに、スポンサーにとっては大きな出費。今シーズンを迎えるにあたり、レイノルズはスポンサー回りをしたがラップディールを獲得できず、彼は自腹を切って自分が思い描くラップ製作を考え出した。それが今シーズンもっとも話題となり、彼のボートがファンで埋め尽くされる根源となった「These Colors Don’t Run」である。陸軍、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊のロゴの上に、この言葉を被せ、「彼らは逃げ出さない、我々の気持ちは消えない」とミリタリーをバックアップするメッセージを添えてボートラップを完成させた。そして、今回レイノルズは、BASSが行なっていた「誰のラップボートが一番カッコイイか」を決定する「Hottest Rig Contest」で投票の20%を獲得し、初代ホッテストリグ・アングラーに輝いた。

 Eliteシリーズは今までのトレイルとはことなり、多くの規制やチャレンジが盛り込まれている。ラップボートをはじめ、選手が着用するジャージ(トーナメントシャツ)の背中には大きく名前を入れたりなど、例を挙げるときりがない。同トレイルに出場するためエントリフィーを支払ったとしても、期限までにボートも登録しなければならず、選手はラップディール獲得のために悪戦苦闘したようだ。
 マイク・レイノルズのプロアングラー・キャリアは西海岸時代を含めて15年。ラップディールのオファーを大小のメーカーにかけてみたが、反応はよくなかった。「ラップ代金は支払えるが、それに伴った広告的な契約はできない」と言われたそうだ。「昨日今日トーナメントに出てきたワケじゃないんだ。無料でラップを施すことはできない」というのが心情。そこでレイノルズは前出のミリタリーラップを思いついた。「どうせ自腹で作るなら、私の気持ちを表現したほうがいい」と。

reynoldsrig063.jpg Eliteシリーズのエントリーフィーは1戦5000ドル。今シーズンは全11戦開催されるので、トータルで5万5000ドルにのぼる。これに現在急騰中のガソリン代、食事代、モーテル代などの諸経費が加わると、10万ドル近い資金を捻出しなければならない。
 しかもレイノルズは、昨シーズン、第3戦め終了後、トーナメントから帰省する途中事故に遭遇。クルマとボートが大破した。その後、クラークスヒル戦で初優勝を成し遂げたが、彼はこのとき「賞金は借金を返済するのに使う」と公言した。つまり、彼にとって自腹でボートラップを施すのは非常に痛い出費なのだ。それでも彼は「アメリカ、世界のために戦う彼らに感謝の気持ちを伝えたかった」と述べて今回のボートラップを施した。

 今シーズン第1戦テキサス州レイク・アミスタッド大会。マイク・レイノルズのラップボートが初のお披露目となった。彼の気持ちを受け取ったファンは会場で大騒ぎ。ファンは自らもボートを湖上に浮かべ、レイノルズの活躍を間近で見ようと彼のボートを追いかけて観戦。1尾、1尾と釣れるたびに国旗を振ってレイノルズに喝采を贈れば、レイノルズもバスをファンに向けてかざし、彼らの気持ちに応えた。そして、ファンはテキサス州にある基地にレイノルズのボートラップの件で連絡を入れると、軍も軍用機を飛ばしてレイノルズの気持ちに応えた。
 
 ではここで彼の今シーズンの成績を振り返っておきたい。第1戦から順に3位、82位、92位、77位、70位、41位、74位、76位、39位、28位、41位、96位(メジャー2戦分も含む)と、お世辞にも好調とはいいがたい。しかし、彼にはファンがついていた。reynoldsrig062.jpg
 会場に行けば、ファンが彼のボートに押し寄せて話かけてくる。「私の息子は今戦場にいるんだが、彼にはキミのボートのことを話してある。ありがとう」と言われることもしばしば。知らない町の小さなガソリンスタンドで給油していても話しかけられるようになった。ハイウェイを走行していると、窓から顔を出して応援の言葉をかけられたり、ホーンを鳴らして応援されたりと、「私の判断は間違いじゃなかった」と思うことが日々起こっているのだという。

 レイク・オネイダ大会のときは、そんなファンの気持ちも頂点に達した。レイノルズがウエイインステージに登ると、MCが彼に一通の手紙と国旗を手渡した。手紙はイラクに駐留する兵隊からだった。reynoldsrig06tears1.jpg reynoldsrig06tears2.jpg「あなたがボートラップを通じて、愛国心を示してくれたのを雑誌やネットで拝見しました。サポートしてくれてありがとう。この国旗にはあなたの名前を書いて、イラクのヘッドクオーターで1週間掲げました。便利で実用性の高いギフトではありませんが、あなたのサポートに対する我々の気持ちです。どうぞ受け取ってください」と記されていた。
 感動である。MCが手紙を読み上げている途中、レイノルズは目頭が熱くなり、前を向くことができなかった。ボートに戻ってからも気持ちを落ち着かせるのに数分かかったという彼は「信じられないよ。私は“ごく平凡な人間”なんだ。こんなに名誉で光栄なことはない」と感謝したのであった。

 そしてマイク・レイノルズは、成績面では最低なシーズンを送っていたが、「Hottest Rig Contest」を受賞。何事にも変えられないビッグタイトルを獲得した。
reynoldsrig064.jpg  「トレイル中、私がマイマネーでラップを製作したのを知った人たちが『寄付したい』とか『餞別だ』といって、援助を申し出てくれた。なかには、退役した人がラップ代を肩代わりすると言ってくれた。でも、それは私のほうなんだよ。私が今、安全な地で釣行できるのは、彼らのおかげなんだ。だから、彼らの申し出は受け取れなかった。彼らの気持ちこそが私のスポンサーなんだ」と心中を語る。
 レイノルズは「Hottest Rig Contest」で獲得した賞金(1万ドル)を来シーズンのボートラップ費用に使用すると宣言。もちろん、来シーズンも愛国心を表現するそうだ。

+Bassmaster.com

Posted by DODGE at 2006年08月25日 18:55 in 海外トーナメント:BASS, 海外フィッシング事情

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