2006年08月05日

熱波、米中東部襲う 電力需要急増、原油高騰…“アキレス腱”直撃

【ワシントン=渡辺浩生】記録的な熱波が米国の中東部を襲っている。2日、ニューヨークでは38度、ワシントンでも37度を超えるなど酷暑に見舞われ、冷房のため電力需要が各地で記録を塗り替えている。米国では先月末に西部のカリフォルニア州で130人以上の死者が出たばかり。加えてカリブ海上の熱帯低気圧がハリケーンに発達する気配で原油価格にも影響している。

 米国では気温はカ氏で表示される。ニューヨーク市内では2日、最高気温が100度(セ氏37・8度)を超えた。ワシントンやフィラデルフィアでも「週内にトリプル・デジット(3けた)は確実」という予報が流れている。この記録的熱波はまず西部を襲い、その後、東海岸に向けてジワジワと移動している。
 記録的な熱波に襲われている米国では電力需要が急増、エネルギーの供給不安が広がりつつある。熱帯低気圧が成長してハリケーンが上陸する危険も迫り、原油価格は1バレル=70ドル後半まで上昇を続けた。原油の国内貯蔵量も減っており、猛暑が米国の“アキレス腱(けん)”を浮き彫りにしている。
 冷房用に電力消費は急増し、国内最大の電力供給会社PJMで1日、電力需要が14万4000メガワットと今年最大を記録するなど各地で需要記録が塗り替えられた。今のところ「需要を満たすだけの供給はある」(PJM)というが、「大規模停電のリスクは徐々に高まっており、電力会社は大きな挑戦に迫られている」(米紙ニューヨーク・タイムズ)。
 3年前の夏に大停電を経験したニューヨークでは、ブルームバーグ市長が記者会見で自主的な省エネ策を市民らに呼びかけ、エンパイア・ステート・ビルでは名物の夜間点灯が1日から中止に。タイムズスクエアに設置された巨大な電光掲示板の一部や自由の女神の台座部分の電気も消された。地下鉄の通路で冷房が止まった場所もある。
 米国は昨年夏に「カトリーナ」など2つのハリケーンが石油生産・精製施設が集中するメキシコ湾岸を直撃する惨事も経験。国立ハリケーンセンターは、現在カリブ海上にある熱帯低気圧「クリス」がハリケーンに発達してメキシコ湾岸に1週間以内に到達する可能性を警告した。
 猛暑による電力需要急増にハリケーン接近が重なって、ニューヨーク市場では2日、原油先物価格が一時1バレル=76・50ドルまで上昇。エネルギー情報局(EIA)によると原油貯蔵量も予想以上に減り続け、原油価格は「80ドルもありうる」(市場関係者)との観測も現実味を増してきた。
 こうした中、上院は1日、メキシコ湾のフロリダ沖の830万エーカーの区域で原油と天然ガスの採掘を解禁する法案を可決した。米国は原油の輸入依存度が57%に達しており、国内増産によって「海外依存度を引き下げる」(ワシントン・ポスト紙)狙いがある。
 1ガロン=3ドル台に上昇するガソリン価格と電力支出増加のダブルパンチが一般消費者の家計を直撃しており、猛暑の余波は収まりそうにない。
(産経新聞)

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Posted by DODGE at 2006年08月05日 20:31 in 自然環境関連

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