2006年05月07日

アサリ被害 伊勢湾でも深刻化 外来種巻き貝繁殖

 本格的な潮干狩りシーズンを迎える中、「アサリの天敵」と呼ばれる巻き貝「サキグロタマツメタ」による、アサリなどの被害が伊勢湾で深刻化している。中国や北朝鮮からの輸入アサリに混入して、外来種のサキグロタマツメタが持ち込まれて繁殖したと推測されており、漁業関係者からは懸念の声もあがる。三重県は今年度から、同湾での実態調査に乗り出す。【浜名晋一】

 サキグロタマツメタはタマガイ科の巻き貝で全長5センチほど。二枚貝の貝殻に特殊な液で穴を開け、中身を吸い取るように食べる。在来種に交じり外来種が国内で確認されたのは90年代後半。東北地方で特に被害が大きく、宮城県の松島湾では今年、4カ所の潮干狩り場のうち3カ所が閉鎖に追い込まれた。
 石巻専修大理工学部の大越健嗣教授は02年、中国と北朝鮮から輸入されたアサリの中に、サキグロタマツメタが交ざっている実態を確認。大越教授は、輸入アサリの稚貝を潮干狩りなどのため海に放流する際、サキグロタマツメタも同時にまかれたのではと指摘している。
 伊勢湾の自然保護に取り組む非営利組織(NPO)「伊勢・三河湾流域ネットワーク」が、湾内全域のサキグロタマツメタの生息状況を調べるため昨夏、各漁協にアンケート調査した。その結果、三重県松阪市や伊勢市などの漁協は1日に10〜100個、四日市市と津市では100〜1000個を採取していた。
 同時に実施したボランティア約200人による調査でも、松阪市内の海岸で1日に計475個を採取。殻に穴を開けられたアサリも多数見つかった。同湾は在来種が生息する海域だが、輸入アサリの放流実績もあることから、多くが外来種であると推測される。
 松阪漁協の05年度のアサリの漁獲高は713トン。04年度の1854トンに比べ、半分以下だ。県全体でも、ピーク時の80年代は1万トンを超えたが、その後減り続け、04年度は約4000トンになった。このため、三重県は今年度、木曽三川河口から伊勢沿岸にかけ、サキグロタマツメタの分布とアサリの捕食量について調査を実施する。
 3年前に輸入アサリの放流をやめた松阪漁協の大橋純郎組合長は「輸入アサリにサキグロタマツメタが交ざっている可能性はあり、放流中止は良かった。しかし、アサリの自然繁殖は少なくなっており、輸入アサリを放流せざるを得ないのも事実。頭の痛い問題です」と顔を曇らせる。同ネットワーク世話人の藤井明生さんは「漁業者は自覚を持って、外来種を湾に入れないよう徹底してほしい」と訴えた。
(毎日新聞)

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Posted by DODGE at 2006年05月07日 15:53 in 魚&水棲生物

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